第16話 炎上

 かろがろと舞い上がり、あかあかと天を焦がす。

「盛大なものだね」

「最近はほとんど紙だから」

 古老はいまや口を噤み、琵琶法師の琵琶の音は消え果てた。

 人はみずからの祈りを紙に書く。

 智は、血に刻まれると嘯く者もいるが、冗談ではない。

 人の血に刻まれた祈りを読める者など、我々しかいない。

「行こうか。『見るべきほどのことは見つ』」

「見るべきほど……一度で済むと思ったんだけどな。でも水の中はこりごりだよ」

「ああ、おかげでいまでも流れ水は渡れない」

 何故我々があの海の底から甦ったのかは分からない。

 まだ見るべきものがこの世に残っているということか。

 あるいは、見届けよと?

 戦の火で図書が燃える。人の智がまた、灰燼に帰す。

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