第14話 物語と現実

「この城には、かつて吸血鬼と恐れられた城主がおりました。遊興にふけり、夜な夜な彼が開く舞踏会で若い娘が犠牲になったという伝説があります」

 観光地の城を背景にリポーターが解説している。

「また適当なことを」

 男がTVのスイッチをオフにした。

「舞踏会一回にどれだけ経費がかかると思っている? あんな鄙びた地方の城で開けば楽団は割増料金、料理は野趣あふれるのだけが取り柄の田舎料理、都会の招待客は馬鹿にして集まらん。すこし考えれば分かるだろうが」

 男は溜息を吐いた。

「金があればな、城を買い戻して舞踏会を開くのに。今なら観光に来た若く美しい女性だってたくさん……」

 肩を落とし、男は柩の蓋を開いて横たわった。

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