第13話 扇風機と電気ストーブ

【無機物BL劇場】


 秋風に紅葉が色づくころ、私が物置に戻ってくると君がいた。

 わずかに入ってくる外の灯り。君は熱反射板をてろりと仄めかせながら冬の夜の窓に流れる結露のことを語る。

 私は眩いばかりの夏の陽、蝉の声、そして土と草蒸れの立ちこめる雷雨のあとの風のことを。

 互いに、見たことのない風景。同じ場所にいるはずなのに、まったく違う世界。

 木枯らしの吹くころ、君は物置から旅立ってゆく。

 独りの夜はさみしい。

 やることのない昼は話相手のいないのが身に染みて哀しい。

 夏の君も、こんな気持ちでいてくれたら、すこし嬉しいような気がする。

 そんな益体やくたいもないことを思いつつ、桃の花の咲くころ、君が戻ってくるのを待っている。

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