第14話 [サッカー部に圧勝]
昼飯後、教室に帰るや否や質問責めにあった。よくわからない質問ばかりだったが、とりあえずみんなの誤解は解けた。
残りの二時間の授業も普通(無双)に受け、放課後になった。
「強谷、グラウンド行こーぜ!」
「ん? ああ、そういえばサッカーする約束してたっけな。行くか〜」
バッグを持って教室のドアに向かう。その途中、銀髪碧眼の女子にジロリと横目で見られる。
(確かこいつの名前は……ソフィア・シーニー・セリェブローだったか? ……何か胸騒ぎがする気がするな)
俺の中の警戒度が五段階あるのならば、五が静音。四がこのソフィア。そして三が朔だな。
朔は俺と仲良くしたいのか、それとも静音と同じく探っているのかまだわからないから警戒度三だ。
内心そんなことを思い、大行列を率いながらグラウンドまで向かった。
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「よしっ! そんじゃ、俺からボールを取れたらまず一点で、次に強谷が俺からボールを取られずにシュートを決めたらもう一点。二年先取ってことでいいか?」
「ああ」
グラウンドの真ん中でボールを足の裏でコロコロと転がしながらルール説明をする朔。
「どっちからやる?」
「んー、じゃあ朔から来ていいぞ。今ボールそっちだし」
「オッケー!」
最初は、俺が朔からボールを奪いとればオッケー。
「俺からボールを取れるかな?」
「ふっ、舐めんな」
「んじゃ行くぞ〜? よーいドンッ!!」
数メートル離れた朔が自分でスタート合図を出し、ボールを蹴って勝負が始まる。
ボールを蹴りながら少しずつ俺に近寄ってくる。俺のすぐ目の前でフェイントをするみたいだな。
予想通り、俺のすぐ近くまで来ると行動パターンが変わる。足をボールの前に出したりして見えづらくする。
そして、俺の右にボールを蹴った。
「ふっ!!」
――というのはフェイントで、実は俺の左にボールを蹴っていた。
「いよっしゃァァ!」
「朔、勝利を確信するのは早すぎたな」
俺の足の裏にはボールがぴったりと付いている。俺は口を三日月のような形にした。
「そんなッ!?」
「くくくッ……」
思わず前世の笑い方が出てしまった。
「くっそ〜……。だがしかし! 次で強谷のボールを俺が奪い取ればいい!」
「さて……朔にできるかな?」
互いに数メートル距離を取り、睨み据える。
俺が「スタート」と合図を出してボール蹴り始める。朔と同じく、途中までは普通に近づいて行く。
「…………」
「ニヒッ♪」
朔がニヤリと笑う。
成る程。さっきあそこまで悔しがってたのは実力あってこそだったか。
おそらく……いや、これは普通に行ったら絶対負けるな。サッカーの腕前は確かなようだ。
――だが、甘いな。例えるなら、〝イチゴパフェ・メープルシロップ&チョコソースたっぷりかけフルーツてんこ盛り〟ぐらい甘いな。……今度作ろ。
閑話休題。
ただの人だったら負け確定だろうな。だが俺は元最強の賢者、そして現最強を目指す男子高校生だ。
こんなピンチ、魔法やズルなしでも乗り越えられるんだ。
ぐぐっ、とボールを破裂しないギリギリの力を込めて押し込み、足の踵あたりに回転して当たってくる。そしてその回転で俺の足、背中を滑走路のようにして通り、俺と朔の頭上を通り越す。
「んなッ!?」
「「「「「えぇぇっ!?!?」」」」」
鳩が豆鉄砲……いや、手榴弾でも食ったかのような反応をする朔と観戦していた生徒たち。
「悪いな、朔。俺の勝ちだ」
通り越したボールを追い、それを蹴ってゴールにシュートした。
「…………ははっ、俺の負けだ」
ペタンと地面に座り込む朔。
その瞬間、スタンディングオベーションで一気に歓声が上がった。
「スゲェーッ! 元サッカー部キャプテンに勝ちやがった!」
「何が起こったかわかったけどなんでそーなんの……?」
「あれは回転エネルギー……失われた技術を使っている……ッ!」
……あっ、そういえば冷蔵庫にネギがないんだった。帰るついでに買いに行くか。
「じゃあな、朔。楽しめたぞ」
「また明日な」
バッグを担ぎ、帰路を辿り始めた。
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