第17話 生きるって?



 マルセリーノは片肘をついて寝転びながらシングルモルトをやっている。

「で、仕事の方はどないなん? 毎日残業で頑張ってるらしいけど」

「はい、何とかやってます」

「めっちゃ不満とかありそうな顔してるけどな」

「はい、不満はいっぱいあります。でも家族のために働かないと」

「ふーん、それで自分は精一杯やってる。そうやって納得させてるんちゃうの」

「はい、自分に出来ることは、それ以外にないですから」

「そうかな?」

「他にできることなんてありませんよ」

「そんなことないと思うで」

「マルセリーノさんは、私を過大評価してるだけですよ」

「お前、やっぱりアホやろ」

「え?」

「誰が過大評価なんかしてるか。よう考えてみ、犬でも猫でも子供が生まれたら子育てするやん。小鳥かってそうやろ。卵が生まれたら母親は一生懸命暖めて、父親は家族のために餌を運ぶ。小鳥でさえも家族を守ること知ってんねんで。お前は小鳥か! このドアホが」


「・・・・・・・・。」


「なぁ、人間てさぁ、偉いん? ワイはそんなこと無いと思うで。今のお前、いや何処にでもいてる皆んなも似たり寄ったりやと思うねん。家族を持って守ることなんか、自然界の生き物のほとんどがやってる事やん。それで人間は偉いと思ってるんやったらめっちゃ勘違いしてるよな」


「・・・・・・・・・」


「それでや、贅沢できるように、いや自分自身を守るためだけに他人を傷付けたりするんやったら動物以下やん。動物は生きるためだけにしか働かへんで」


「・・・・・・・・。」


「なぁ、結婚したら生活を家族を、守るのは大切な事やなくて当たり前のことやねん。それ以上の何かを求めて生き抜く事、それが人間ちゃうん?」


「何か、って何んなんでしょう」


「せやな、誰もがやってる自分の為に他人を傷付けたりの逆とかで、人を癒すとかちゃうん」

「看護師さんとかですか?」

「アホか、誰が身体の傷限定にせい、言うてん」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る