第9話 時の流れ



 マルセリーノは、今日も研究所へ行かず。書斎で宇宙理論物理学の理論を解明しようとしている。解明しようとしていると言ってもコーヒーの香りが部屋に漂うがままに任せているだけである。ノートに書いている方程式も、まるで出鱈目である。


「然しなぁ、ワイ、ほんまに何してるんやろ?」

ぺペンギンは、短い翼で頬杖をついている。


「このまんま、時間が過ぎて行くいうのも、なんとのう、勿体ないような、なぁ」

ぺペンギンは、頬杖をついている翼を右から左に変えて、なおも動かず、コーヒーが冷めていくままに任せている。


「歩いてても、じっとしてても、時は過ぎて行く。ワイ、流れに取り残されてるような気分や。目標がないって寂しいなぁ」


 そう言いながら書斎のある部屋の2階の窓から外を眺める。そこからも隣にある兎牧場が見える。


 すると、突然マルセリーノが声を発する。

「あ、またや! あいつどこ行きよってん!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る