第8話 人体複製とは



 コーヒーを飲みながらジュリアーノが続ける。

「生命の復活とは、地球上で24時間、或いは他の星では地球時間に換算したとして、240時間、若しくは24分、どれも生まれて来て亡くなるまでの時間経過を考えると一瞬の夢のもののように思えるのです。その一瞬の出来事が歴史にどれだけの影響を与えられるものなのか誰にも分からないと思うのです。その人の一生には強い思いが残ることだけは間違い無いと思うのですが。人の夢を叶える一瞬の現象と、誰にも分からない歴史への影響と一体どちらが大切な事なのかよく考えるべきだと、私は思いました」

「で、お前は、それを会議で進言してんな」

「はい、その通りです。でも、議会では通りませんでした」

「あいつら、頭硬いしな」

「それはどうか私には分かりませんが、そう言うことであの装置が今後使われるかどうかは分からなくなりましたね」

「大丈夫や、ほんまに必要な時が来たら、ワイがまた、盗み出したるし」

「はははははー、さすが統括教授ですね。嘘が本当になりそうです」

「誰かが幸せになるための嘘やったらかまへんやん。逆に誰かが苦しむような真実やったら明らかにせん方がええ時もある、やろうしな」

「全く統括教授には恐れ入ります」

「それ地球の言葉で言うたら、恐れ入谷の鬼子母神、言うらしいで」

「ははははは、その言葉、どういう意味なのか後で調べてみますね」

「興味あったらでええよ。それより今日は突然で実験の邪魔して悪かったな」

「いえいえ、統括教授と久しぶりにお話しできて楽しかったですよ」

「ワイもや。有難うな。ほな、さいなら」

「マルセリーノ統括教授、失礼いたします」


 そう言い合うと、2匹のペンギンは席を立ち上がった。

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