第3話 アメリア・ボフミエ魔導学園・入学式

2週間後に私はボフミエ魔導国に来ていた。クロチアから大河クロチア川を下ったのだ。上りは大変なのだろうが、下りは1週間の快適な船旅だった。私は旅をしたことも殆どなかったので、見るもの聞くもの珍しかった。でも、はしゃいでみようとしたが、失恋は未だに尾を引いていて全てを楽しむというわけにもいかなかったが・・・



ボフミエ魔導国、つい先日まではボフミエ魔導帝国として周辺に君臨し、皇帝は魔王を復活させていまだかつて誰も成し遂げたことのない世界制覇をしようと企んでいたのだ。かの有名な戦神シャラザールの建てたシャラザール帝国ですら、今で言うマーマレード王国、テレーゼ王国、ドラフォード王国を併せ持った版図しか無かった。それを魔王を復活させて世界制覇をしようと企んのだが、2大超大国のノルディン帝国やドラフォード王国、それと大国マーマレードの皇太子らの活躍で阻止されたのだ。


その後に建国されたと言うか復活させられたのがボフミエ魔導国。帝国になる古に戻せとばかりに、世界最強魔導師だと思われるマーマレード王国のクリスティナ・ミハイル侯爵令嬢を筆頭魔導師としてそれを各国皇太子が補佐する国として動き始めたのだ。


出来た当初は個性は揃いの各国皇太子による我の集まりで、うまくいくはずはないとか、たかだか一侯爵令嬢に皇太子達が従うわけはないとか、別名おままごと王朝とか、散々の言われようだった。しかし、この寄せ集めの王朝は力のあった4大商会であるGAFAの陰謀による飢饉を協力して叩き、皆の期待に反して、今順風に国政を運営し始めたのだ。


今回始めたボフミエ魔導学園はテレーゼの皇太子アメリア王女が資金を出したようで、ボフミエ・アメリア魔導学園として、スタートすることになっていた。


15歳の3年制の200名と即戦力を期待された16歳以上の1年制120名が募集されていた。


即戦科は事務官コース1クラス40名と魔導師コース2クラス80名に分かれており、私、ソニアは事務官コースに応募していた。魔力はあるにはあったが、魔術は宮廷では殆ど使ったことがなかったので、事務官コースの方にしたのだが、それに、大国の要人あるいはその部下がいそうだと思ったのだ。


私は入学式にギリギリだったが、何とか前日に間に合った。


王女の推薦状と魔力は元々多い方だったので、簡単なテストで入学が認められた。




そして今日は入学式だ。


「よし、頑張ろう」

私は気合を入れて寮の部屋を出た。


そう今日から私の新しい生活が始まるのだ。


失恋は忘れて新しい生活にかけるのだ。


王女からは任務は忘れて思いっきり新しい生活を楽しんできてと言われたが、私が二人のことを知ったと気づかれたみたいだった。王女も幼馴染も二人共やけに優しかった。

おじゃま虫は消えるのみだとその時はいじけて考えていたが、いつまでもうじうじしているわけには行かない。何しろ私は元気だけが取り柄なのだから。


頑張って大国の王族を捕まえて我が国の窮状を訴えてリーナ姫の後ろ盾になってもらうんだ。


私は決意も新たに入学式のある講堂に向かおうとした。


遠方から来ているものは寮にはいったが、国都ナッツアに住んでいる生徒の多くは通いだった。


しかし、気合を入れて受付に行くともう誰もいなかった。



「え?」

私は驚いた。たしか、10時に始まるはず。まだ15分前だ。


「君、遅いね」

係の人に言われる。


「えっ、でも今はまだ15分前では」

「何言っているんだい。9時30分に講堂集合だよ。10時は式典の開始時間」

「うそ、ごめんなさい」

名前を言って受付をすると私は慌てて駆け出した。


やってしまった。私は元々おっちょこちょいなのだ。

今回は時間もはっきり確認したはずが、失恋や新たな任務に考えが行ってしまって肝心なことを注意しなかったらしい。そう言えば寮から誰も歩いていないのはおかしかったのだ。



慌てて講堂に飛び込んだらそこにいた人にぶつかってしまった。


「何をする」

そこには私を受け止めてくれた男が怒っていた。


「ごめんなさい。急いでいて」

慌てて謝る。


「どこを見ている。気をつけろ」

男は言い放つとさっさと歩いていった。


「ふっ、良かった。殴られるかと思った」

私はホッとして思わずふらつく。


「君早く席について」

立っていた先生と思しき人に注意される。


「すいません」

私は慌てて空いている席を探す。


でも、後ろの方の席は一杯で前の方の真ん中の席しか空いていなかった。


仕方無しにそこに行く。


「そこ空いていますか」

黒髪に黒フチメガネをしている女の子に聞く。


「ええ、空いているわ」

女の子が前を少し開けてくれたので、

「すいません」

と言ってその席に移動しようとしてその手前の男に目がいった。

なんとさっき私がぶつかった男の人だった。


「すいません」

きっとして睨んでいる男に頭を下げる。さっきは確かにぶつかったのは悪かったけれどそこまで怒らなくてもいいのにとは私は思った。



「そこ、早く席について」

司会をしている先生がこちらを睨んでいた。私が座るのを待っていてくれたらしい。


「すいません」

私は真っ赤になって何とか席についた。


その後の学園長の話も何を話されたか、恥ずかしいし、男にムカつくわでよく覚えていなかった。


ただ、学園は身分に関係なく、みんな平等だというのは聞いた。


でも、これは絶対にそんな事は無いと思う。


あくまでも建前がそうなのだ。


貴族の令嬢や令息には気をつけて話さないと。それでなくても私はおっちょこちょいなのだ。どんなミスをするか判らない。さっきの男も傲慢な態度からして貴族の令息だろう。

できるだけ関わり合いにならないようにしようと私は心に誓った。

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