四、ゴブリンとの戦闘

 俺はまずゴブリンを探すため、周囲を探る鑑定を発動する。俺の右目にある鑑定の魔眼には様々な能力が備わっている。例えば今回使う周囲を探る鑑定は、半径数百メートル以内の様々な物の情報を得ることが出来る。使用者の目の前に表示させることができ、それ以外の不要な物の情報は自動的に排除されるようになっている。


 それ以外にも遠くを鑑定して情報を得たり、家の中を透しして情報を得たり、相手の動きを鑑定して先読みしたりなど、能力をコピーする以外にも、様々な能力を秘めている。


 今回の鑑定対象はモンスター、それ以外の薬草などの情報は一切排除される。目の前に周囲半径百メートル程が表示される。そこに小さな点が数個現れる。この点がモンスターを表しているのだが、目的のモンスターであるゴブリンの反応がない。この近くにはいないのかと思った時、俺のいる場所から北に五十メートル程の所に二匹発見した。


「まずは二体だな」


 俺は、スキル身体強化を発動してゴブリンのいる所へと全速力で向かって行く。


「スキルにも体がしっかりついてくるな。この三年間全く使っていなかったから、体が衰えているかと思ったが、そうでもないようだ」


 俺は一分もしない内にゴブリン達のいる所へと到着。小さな茂みの影に隠れてゴブリンの様子を伺って見る。二体のゴブリンが辺りを見渡しながら立っている。手にはゴブリンの基本装備棍棒を持っている。鑑定でゴブリンを見てみても。


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 ゴブリン ゴブリン種 LV1


 スキルなし


 武器:棍棒

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 普通のゴブリンの鑑定結果。レベルも一と低い。


 俺は鑑定まで終えてゴブリンの情報を得た。後は倒すだけである。茂みから飛び出してゴブリンに姿を見せる。するとゴブリンは俺の方に振り向き、


「ギャー!」


 威嚇してくる。正直何を言っているか分からないが、敵対視しているのは分かる。


 俺は腰に下げている剣を抜き構える。俺の行動を見て、一目散に向かってくる二体のゴブリン。振り上げた棍棒を俺目掛けて振り下ろしてくる。


「武器強化」


 スキルを使い、手に持っている剣を強化し切れ味を上げる。それにより棍棒は真っ二つになりそのまま胴体も真っ二つに切れてしまった。


 あっさりと倒せすぎて少し驚きはあったが、まだもう一匹いるため気は抜けない。


 仲間がやられたことに怒りを表すゴブリン。


「ギャ、ギャー!」


 何かを言いながら向かってくる。俺は迎え撃つために、もう一つスキルを使う。


属性付与エンチャント火」


 剣に火の属性付与、刀身に炎を纏う。このスキルは手に入れてから初めて使うがなかなかいい調子だ。


 炎を纏った剣でゴブリンの攻撃を迎え撃つ。先ほどよりもあっさりとゴブリンを切り伏せる。それにより戦闘は終了。


 目的であった感覚を取り戻すことは成功とも言える。おもった以上に感覚を取り戻すことは出来た。それにいくつかのスキルも試すことが出来たのは良かった。俺のスキルは殆ど得てから使っていなかったため、熟練度が低い。それに俺のレベルもだ。だからこそ、どれほど戦闘を出来るかが少し不安であったが、ここまで戦えたらまあ問題ないだろう。


 スキルの熟練度、これはほぼ全てのスキルに存在している。一部例外はあるが。この熟練度は最大で十まで有り、この熟練度が高ければ高い程スキルの効果も上がる。スキルの熟練度はそのスキルを使う事で上がったり、対象の魔法を使う事で上がったりと様々である。その上、スキルによってはかなり熟練度が上がりにくい物も存在している。


 それとレベルだが、今の俺のレベルは十、五年前とさほど変わっていない。それもそのはず、ケイル達といた三年間、戦闘を全く行っていなかったのだから。レベルを上げるには、モンスターを倒すことで手に入る経験。対人戦などで手に入る戦闘経験を積み重ねていくことで上げる事が出来る。このレベルは種族によっても違いがあり、俺達人間はせいぜい上がっても百までである。その上、上がる速度も遅く、様々ある種族の中で一番弱いのが人だと言われている。俺達赤い流星が拠点としていたミールの街は、人族しかいないためバカにされたり、見下されたりすることはない。これがもし他の国だとそうはいかないだろう。


 今回俺が受けているのは討伐依頼。この依頼は対象のモンスターを倒すことを目的としている。そのため対象を倒した証拠として、ギルドで定められている討伐部位、ゴブリンであれば耳を切り取り提出することで報告となる。今回に関してはゴブリンを五体倒して、五つのゴブリンの耳を提出することで完了となる。そのために後三体見つけないといけないのだが。


 俺がまた周囲を探るための鑑定の魔眼を使おうとした時、


「誰か! 誰か助けてー!」


 何処から声が聞こえてきた。助けを求める声、かなり急を要しているように聞こえた。俺は、ゴブリンを探るのをやめて、声のする方へと向かうことに。最初に使った身体強化のスキルがまだ続いているため新たに使いなおす必要はない。


 全速力で声のした方へと向かうと、一人の少女がゴブリンに襲われていた。


「誰か、助けてー!」


 何度も叫ぶ少女、遠目ではあるが目元に涙を浮かべているのが分かる。ゴブリンの数は五。少女の装備からランクの低い冒険者だと分かる。一対一であれば勝てるかもしれない相手でも、一対五ではかなり厳しいだろう。それにゴブリンの方も他四体のレベルは一や二しかいないが、一体だけそれらよりもレベルの高い個体がいる。それにもう一つ厄介なのがこれだ。


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 ゴブリン ゴブリン種 LV5


 スキル:身体強化 熟練度3


 武器:棍棒

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 稀にいるスキル持ちのモンスターであった。しかもゴブリンにはぴったりとも言える身体強化のスキルを持っている。だからこそレベルも高い。


 俺がそんなことを考えていると、ゴブリンの一体が、棍棒を少女へと振り下ろそうとする。冷静にそんなことを考えている場合ではないと思い、剣を抜いて少女とゴブリンの間に割って入り、攻撃を受け止める。


「もう大丈夫だよ」

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