第2話 「児童監視員」
幼女、坂田真莉に監視がバレた高卒ニート原沼童子は、幼女を友達(?)にすることに成功。このことを早速、同業者かつ高卒ニートである百合崎勇人に報告するのだった。
こ、これは勇人に報告しなければ...
童子はそう思うと、児童観察日記の入ったカバンからスマホを取り出し、勇人に電話をかける。するとすぐ着信し、
「おい!まだ下校中なのに電話をよこすってことはナニかあったんだなァ!」
と、俺が小学生に話しかけられて先を越されてしまっているんじゃあないかと言わんばかりの焦りようである。というか鋭い。
「あぁ、ありのまま 今起こったことを話すぜ!おれは小学生を隠れて監視していたと思ったら いつのまにか一人の幼女に気付かれていて、慰めてくれると言われた」
と、童子は興奮を抑えようと早口にならないよう心がけたが、その熱は電話越しにも伝わっていたであろう。勇人は黙ったまま童子の話を聞いていた。おそらく先を越されたショックで失神しているのだろう。
「な...何を言っているのかわからねーと思うが」
と、言い続けたところに
「もういい、わかった」
と、すかさず勇人がこたえた。
あれっ、失神してない。
「......まあ、それはつまり、俺たちの夢に一歩近づいたってことだよな」
「そうだな」
真剣な声色で尋ねる勇人に対し、童子も真剣に応えた。
今から約一年前、これは「児童監視員」の経緯についての話である。
高校を卒業してから特に趣味も仕事も女も見つけられていなかった童子は、昼寝や唯一の趣味であるゲームに勤しんでいた。
ある日、唐突に勇人に家に来いと誘われた。その時童子は、家に誘うということを怪しいと思い、まさか俺を襲ってBLをおっぱじめるんじゃないかとも考えたが、まあそんなはずないだろうし、断る理由も無いのでしゃーなし行くことにした。
家に着き、さっそく話を聞いてみると、勇人はとんでもなく核心をついてしまったことを言い始めた。
「なんか俺らつまんねぇ人生送ってんなって思わねえか?」
「まあ...」
童子は反論しようと思ったが、言葉が見つからなく急に寂しくなった。
「そこでだ、俺考えたのよ何でつまんねぇんだろうなって」
「はよ言え」
宝くじを当てたかのように勿体ぶらせる勇人に童子は腹を立てた。
「おい、落ち着けって。俺たちが一番楽しかったと思う時期っていつだ?」
なんだコイツ、まだ言わないのか。童子はそう思った。
「小学生...くらいかな...」
「そうだろ!やっぱり小学生だろ!」
勇人はそう叫びながらベッドの上を飛び跳ねた。
「まさか、小学生に戻りたいって言うんじゃないだろうな」
童子は少し呆れてそう言った。
「ちげぇよ、ばかぁ!」
勇人はそう叫んだ。
いまの「ばかぁ!」がちょっとかわいいと思った。もし、その発言をしたのが児童だとしたら個人的評価によると80点だっただろう。さらにそれが女児だった場合はゆうに100点などは超えていた。
じゃあコイツの場合は何点なんだって?俺をあまり馬鹿にするな、コイツは13点だ。
そんなことを考えていたが切り替えて童子はこう言った。
「じゃあ何?」
「俺たちが小学生たちと仲良くなって、一緒に遊ぶ事であの頃の楽しさが蘇るとおもったんだよ!」
勇人はやはり興奮して言った。
正直、そこまで年齢が離れていたら話題が食い違うと思うし、体格や体力の差があるので話にならないと思った。が、それもそれで小学生に刺激を与えられるのではないかとそんなに悪い発想では無いと童子は面白く感じた。
「...うぅん、まぁいいんじゃない?」
「だろ!じゃあ明日から小学生の観察といくか!」
勇人が嬉しそうにそう言う。
「おいおい、観察するのかよ!悪くねぇじゃねぇか!」
童子がここぞとばかりに変態を見せつけた。
この時から童子は今まで退屈だった人生に何か転機が起こりそうな予感がし、ワクワクしていた。人生というのは何が起こるかわからない、そういうものだ。
2話 完
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