第17話 再スタート

 ハウスメーカー側は、決済権のある人が約束してくれたように、会社の不手際によるものは金額を請求をしないという姿勢で対応してくれた。

 ここで、夫のPCに保存された進捗メモが大いに役に立った。上司のKさんと共有して確認してもらうと、据付直前の段階で、未確定だったのに決まってしまったところ、変更したのに変更されてないところが明確にできたのです。そして、その部分に関しては請求されないということになった。リストアップすると結構ある。

 この際、ハウスメーカー側の事情は一旦置いておいて、お言葉に甘えることとする。会社側にとっては、まぁまぁの損害かもしれませんが、こちらとしても、まぁいいですよ今回はって買えるような金額の買い物ではないのです。諦めばかりでできた家なんてい嫌ですもん。それでは、「ナマケモノ家を建てさせられる」だもの。

 それにしても、夫のメモは助かった。Kさんも整理をするのにとても助かったと言っていた。

 決まっていたのに見積もり漏れてたとかの証拠となったり、新たな担当Kさんとの突き合わせがスムーズになった。逆にこれがなかったら、ハウスメーカー側に大した記録が残っていなかった我が家のケースの場合、どれだけ混乱しただろうかとゾッとする。

 少しのんびりだけど、手間は惜しまない夫さまさまに感謝です。当時そこまでするぅ?と思っていたわたしを叱りつけたい、そして、それを口に出さなかったわたしは軽く褒めておく。


 そこから始まった打ち合わせ地獄。仕事が終わって夕方から打ち合わせを開始して夜遅くまでかかることもあったが、これまでのMさんとの打ち合わせとは疲れ具合が違った。

 打ち合わせの場で、悩み考えるMさんをずっと待ってる感があった打ち合わせは、やはり普通ではなく異常だったようだ。代わって担当となった上司のKさんは、少し冷たさを感じるところもあったが、淡々と、こちらの希望要望疑問点をメモし、その場で確認や解決できるものはすぐに行い、時間がかかるものは、次回の打ち合わせまでに確認し答えを出す。

 本来こうですよね!あースッキリする!ずっと打ち合わせのやり方にモヤモヤしていたのが、いっきに晴れた。

 家づくりなんてほぼ一生に一度で初めてのことばかり。自分が知らないからと引け目を感じ、プロであるハウスメーカーの担当さんに思ったことも言えないのではダメです。何が普通で何が当たり前かなんてわからない。なんかおかしいなとか、嫌だなとか納得いかない時は、その時にしっかりぶつけないとダメですね。


 半年間かけて各所打ち合わせてきたものを1ヶ月もかけずに総ざらいしなければならず、しかも、どこが確定していて、どこがお互いに共有できていて、どこが変更可能で、どこが変更不可で、がハッキリしない中なので、なかなか困難を極める。

 更に、ほぼ手付かずだった、お店部分を理想に近づけるための問題解決も並行してやっていかなければならない。

 それでも、我々もハウスメーカーもめげずに頑張ったのです。

 少しずつ終わりが見えてきて、打ち合わせのちょっとしたブレークタイムに、冷たく感じるほど冷静な上司Kさんから、半年間あいつは何をしてたんだ…という言葉が漏れ出た。感情的になることはなく、無駄話もあまりしないKさんでしたが、疲れと怒りのあまりなんでしょうね。あいつの責任なんてなんの役にも立たないっ!と小さな声だったけど吐き捨てるように言ったこともあった。Mさん責任とって辞めますとかなんとか言ったのかしら…

 少し前なら可哀想と思っていたMさんにも、どんどん明らかになる不手際に、呆れて頭にもきて、こちらも冷たい感情が沸き起こる。

 こちらは、計画をやめることもできないですしね…辞めますでリセットできたらいいですね…そうはいくか!すべてが済んだら、甘かったです発言から姿を現さなくなったMさんと、もう一度しっかり話をさせてほしいと伝えてある。真相が知りたい。何を思ってそうしたのか聞きたい。悪い人には思えないから話したいのです。

 ナマケモノは基本ナマケモノですが、時にパッションで動く夫の影響を受け、熱い気持ちも湧いてきた。

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