第8話 土地があるけど土地がない

 拠点を変え、引き続きハウスメーカー回りをしながら、土地を探す日々。転居、転職、転校、と落ち着かない中、すべては早く家を建てるためと、ナマケモノの体と精神に鞭を打ち、頭もフル回転の日々。

 なのに土地がなかなか見つからない。

 眺めのいい田舎で、空いている土地だらけなのに、いざ家を建てる土地を探すとないのです。

 まず不動産屋さんに聞いても、売りに出ている土地があまりないらしい。ここがいいという土地があったら、持ち主に交渉すると売ってもいいよって場合が意外とあるらしい。しかし、農地だと色々難しいらしく…そして、いいと思うのは農地ばかり。

 

 ここで住んだ賃貸マンションは、広さも部屋数も今までの一軒家よりかなり狭くて2LDKだったけど、造りがしっかりしていて、防音具合がすごくよかった。さすがに上の階のガタとかゴトとか物音は多少聞こえるが、両隣に部屋があり子供のいる世帯も多かったが、声やテレビの音などは全く聞こえなかった。気密性も高く冬も比較的暖かかったが、交通量の多い大きな道路に面していて、通気口から冷気と共に車の走行音などが入ってきて、それはかなり気になった。しかも通気口はすぐに真っ黒になり空気の汚れも気になる。洗濯物は外に干したくなくなって、家の中に干すには結構なスペースを要した。オール電化で、それまで避けていたIHコンロを初めて使ったが、思ったより不便ではなかった。ただ、電気の給湯器は古かったのもあるのか不具合が多くストレスだった。あと狭く区切られたお風呂の脱衣所や洗面所の洗面台下の棚は使いづらくてデッドスペースになってしまう。

 ここでの生活から、また我が家の好みが見えてきた。

 大きな通り沿いはやめよう。

 換気は自然換気でなくフィルターを通して行う換気システムがいいな。

 コンロは電気でもいいかも。

 給湯器はガスがいいかな。

 ガス乾燥機が必須でプラス小さなサンルームがあればいい。

 お風呂の脱衣所や洗面台の周りは足元もすっきりさせたいし壁やドアもなしでよし!


 この新たな土地で暮らしを感じながら、週末毎に、売りに出ている土地の現地を見に行ってみる。

 広さも場所もなかなかいい土地があったが、目の前に崩れそうな謎の小屋がある…お店をやるにはちょっとなしだな。

 ちょっと高台で眺めがいいと聞いて行ってみると眺めた目前に高速道路がバーンと見える…というか、高速道路しか見えないのでなし。

 金額が安くて周りにも何もなく眺めもいいけど、400坪の森がついた土地…これは使いきれないし管理しきれない。

 山の上の方で、お店的には隠れ家的なとか日常から離れて的にもっていけそうな土地もあったが、土地自体がすごく安くても、水道がない、ガスがない、と後々の整備費でかなりかかる上に、生活は超不便なのでなしだな。

 そして、田舎の中心地のプチ市街に建てるくらいなら、元いた市街地の少し外れのほうがまだいい。両者は土地の金額もそれほど違わないのがわかった。


 住んで暮らして探して半年程で以上のことを感じていたナマケモノ一家のもとに、とあるハウスメーカーの営業マンが、自社の分譲地の情報を持ってきた。なんとその場所が…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る