第3話 靴下み〜つけた!

カクヨムを始めて二日目。


 書くって楽しい!と思いながら子どもが寝た後のこの時間を満喫する。文章を書くって難しい。だけど頭に浮かぶ妄想や物語を書いてみたいと始めた私は読むことはできても書くことがはできないと悟ってまずはただ書いてみよう! とカクヨムで書くことを始めた。


 ただいま、零時。さぁ! 一日一話エッセイを書くぞと意気込んだ私は、明日、いやもう今日なのだが、家族で伊勢神宮に今年のお礼参の旅行に行くことを思い出す。明日と言う名の今日はかけないじゃないか! 今書かぬして1日一話書く目標は達成できぬ! 金曜10時のお楽しみドラマの見逃し配信を見ている場合ではないと、そんなことは月曜日にまとめてみればいい! と、パソコンに向かった。


 だがしかし、寒い。光熱費があまりに高すぎる我が家は節約志向が働いた私によって、夏は暑く冬は寒い。夏は庭でプールに浸り暑さを凌ぐ。井戸水だから水道代はかからない。秋からは日のあるうちは電気をつけず薄暗い生活をしている。深夜、夕方につけていた床暖房の温もりも、子沢山の熱気も消え失せ、背筋が凍るとは言わないまでも、つま先から冷え切った冷気がじわじわと体をむしばんでくる。


 はっ! 私は気づいた。


 靴下を履いていない!


 どこだ?さっき脱いだ靴下はどこに行ったのだ? 洗濯機か? いやまだ洗わなくていいと思ってどこかに置いたはずだ! どこに置いた? どこなのだ?


 薄暗すぎるリビングを探し回る。ソファーか? ソファーのクッションをいくつもいくつもリビングの床に放り投げながら探す、が、見当たらない。


 くそっ! おっと、くそっなんて言ってはいけない。私は子どもを育てている母親なんだから、それはダメだ。ごめんなさい。言ってしまった自分に反省し、靴下を探す。


 さっき確か、パソコン触るならいつもの場所でポカポカ足湯であったまりながらと思ってキッチンカウンターに向かい、愛用の椅子を見たら猫が陣取っていて、あぁ、ここは今日はあなたにあげるわと言って、座ることを断念し、行き着いたダイニングテーブルで脱いだのではないか?


 ない。リビングに目線が高いものを置きたくないとこだわって作ってもらった一枚板からできた座卓のダイニングテーブルの下にもない。


 寒い。どんどん足が冷えてくる。こんな状態では、床暖房を私だけのためにつける羽目になりそうな気がしてくる。もったいない! 私だけのために床暖のガス料金を払うなんて! ありえない! 探さなくてはいけない靴下を。ウールでできたあったかくて分厚い靴下を。


 靴下さんの呼ぶ声が脳内再生で聞こえる。


 「おーい、ここですよー。私はここにいますよー。あなたがさっき置いたところですよー。二個一でくるっと足首のところを丸めておいたじゃないですかー、ここですよー、すぐ近くにありますよー。」


 知ってる! 二個一でくるっとしたの知ってる! やったの私! どっかでまた履こうと思っておいたのも知ってる! だがどこに置いたか探しても見つからず、私のつま先からくる冷たく冷えた感覚が足首までやってくる。さぶっ!!! 早く見つけなければ! もはや、ヒートテックにフリースベストではこの寒さは持たない!


 「ここですよーあなたが置いた場所ですよー忘れないようにここに置いておこうと言ってたじゃないですか、忘れてしまたんですかー」


 うんそうだったね、知ってるよ、そうだったことも覚えてるよ、だけど、どこに置いたかが思い出せないんだよーーーーーー


 「美味しいビール飲んじゃったんですかーここですよービール飲んで忘れたらそれはもうアウトですよー」


 アウトだね、確かにアウトだわ。そんなことよくあるわ。自分でもわかってますよーーーーー! 靴下さーーん! 思い出させてくださいよーーー!

どこに置いたのかをーーーー! 寒くなってきてしまったんですよーーーー! 早く! 早く! 居場所を教えて! 楽しく妄想できるのは後ビール一本飲むだけに許された時間なのですよー! もう一本しかないし、その最後のビールのプルトップをプシッと気持ちよく今あけてしまったのですよー!


 こんな状態では、子どもの体温にすがって子どもの体に足の先を擦り付けて寝なくてはならない。早く見つけなければ! 快眠の妨げになってしまう!


 私はウロウロと、そしてヨロヨロとおぼつかない足取りで、だが目的、そう靴下を見つけて履くという目的に向かいリビングを探し回る。やけにクッションがたくさんある新築の時に奮発して買った飛騨家具のソファーの中。もしやと思い覗く洗濯機。いやここかと探るキッチンカウンターの椅子の上。だがどこにも見当たらない!!


 「ここですよー、ここですってば」


 どこなの? 私の靴下ちゃん! どこにいるの? あなたは今どこで私が見つけてくれるのを待ってるの? 


 かくれ鬼の最後の一人を見つけるかの如く、深夜私は靴下を探し回る。


 お風呂の脱衣場なの? 今日はまだお風呂に入ってないんだけど、そこで脱いで脱いだところで今日は面倒くさいとお風呂に入るのをやめたけど、そこにいるのね! 


 いなかった喪失感。 

 あぁ、ここでもないのですかそうですか。


 どこなの? 靴下ちゃん、もう私のヒートテックとフリースベストも寒さを堪えきれないわ!早く出てきて靴下ちゃん!


 と、ここまで綴ったところで、Macちゃんのバッテリーが7%。


 こりゃもういかんと。もう今日という日を終わらせなくてはと尿意をもよおしトイレに行った先で私はついに出会った。


 靴下ちゃん、こんなところにいたのですか?

 

 いつの尿意で脱いでしまったかは未だ謎だが、会いたくてこの小一時間探し求めていた靴下ちゃんにやっと私は出会えた。


 もう、あなたを探さなくていいくらい、私、ちゃんとしたいです。



 妄想日記は毎日続く。



 




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