第9話 酒を飲んだ日

 夫と共通の友人とのオンライン飲み会が延期となったため、2人で家で飲むことにした。通院の帰りに何を食べようか何か作ろうかと話しつつ、結局スーパーで酒とつまみ、惣菜を買うことにした。

 酒は缶のまま。惣菜は容器のまま温め、容器のまま食卓に並べる。取り皿は容器の蓋。箸は割り箸。

 缶を開ける音が響く。乾杯だけは丁寧に行う。適当に飲みながら食べながら、記憶に残らないようななんてことはない会話をして夜が更けていく。

 2人の時でも、ジョッキや皿を用意して丁寧な飲み会をする日もある。しかし今日は雑に飲みたい日なのでこんな飲み方だ。

「雑な飲み方ができるって良いね」

「こういうの楽しいよね」

 ただずらずらと食卓に並べられた惣菜を見て思う。夫が夫で良かったなと。きっと夫も同じようなことを思っているだろう。

 私はもう1缶手を伸ばす。カシュッと良い音が響く。再度乾杯をした。

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