第19話 栄子へ



★ 栄子へ




二○一六年初夏。



河口湖での栄子の姿が、

タイムリーで

インスタに写っていた。



僕は勝手に運命を感じてしまい。

栄子に電話をした。



栄子、

僕は今どこにいると思う?

今、僕、

栄子と同じ

景色を観てるんだよ(笑)!



休みの日、

僕も一人で富士山を

見に来ていた。




栄子は嬉しそうに、

本当!嘘でしょ!

千尋、会いたい!

じゃ、今から

富士山口の駅に集合〜!

って。



あのとき、

集合場所で栄子に

会えた時には、

本当に偶然を信じて

嬉しくて、嬉しくて、

思わずハグ仕合ったよな。



幸せだったな。



忍野八海のまるで

宇宙の様な深蒼の

ブルーを見ながら、

栄子に言ったな。


みんなに出会えて、

仕事も落ち着いて、 

それなりの経済力も手に入れて、

龍斗とも十周年経った。


凄く今幸せだから、

もう死んじゃうん

じゃないかって思うんだ、

って。



なんかさ富士山の

ふもとで偶然、

栄子と会えたのも

死んじゃう前のミラクルって

神様が言ってる

様な気がして(笑)



栄子は、

少しバカにした様な

笑顔を僕に向け、

僕の目をしっかり見ていった。




今、千尋を失ったら困る!

私の人生の中の妄想には


まだいっぱいいっぱい

千尋が登場してくるんだから(笑)



僕の未来にも本当は

栄子がいっぱい

描かれているはずだった。



でも今は妄想すらする

気力を失ってしまったよ。



素敵な時の栄子だけを

メモリーして、そろそろ消えるね。




いっぱいいっぱい

千尋が登場してくるんだから。



本当に嬉しい言葉だったよ。



ありがとう、栄子。







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