―初恋―

紫雲

最初で最後の恋

好きな人ができた。

私は好きな人を作っちゃだめなのに…

なのに好きって気持ちは止まらない。

その人のことを目で追っちゃう。

その人のことを考えちゃう

私は恋をしたことがなかった。

だから、どうしていいかわからなかった。


ある日、席替えでその人と隣の席になった。

話す機会も多くなった。

毎日が楽しかった。

ずっとこんな日が続けばいいと思った。


その日は朝から雨が降っていた。

憂鬱な気分だった。

だけどその人の言葉で憂鬱な気分は吹き飛んだ。

「放課後、図書室に来て」

告白かな、と予想はついた。

両思いだって知っていたから。

でも、私は誰かと付き合っちゃだめなんだ…


放課後、言われたとおり図書室に行った。

その人が待っていた。

図書室にはほとんど人がいなかった。

「好きです、付き合ってください」

とその人は言った。

「はい、喜んで」

本当はだめなのに…

私は「はい」と言ってしまった。

どうか上手くいきますように。


その人と付き合ってからの毎日はもっと楽しくなった。

学校ではもちろん、家に帰ってからもたくさん話した。

週末は電車に乗ってお出かけをした。

お互いの家に行ったこともあった。

これなら大丈夫かな。

そう思っていたのに…


私の誕生日にその人と遊園地に行くことになった。

誕生日を好きな人と過ごせるなんて夢かと思った。

一日ふたりで楽しく過ごした。

最後に観覧車に乗ることになった。

私達は向き合って座るのではなく、隣に座った。

ふたりで見る夕焼けはとてもきれいだった。

「大好き」

そう言いながら手を重ね合わせた。

その人が私をじっと見つめた。

私もその人をじっと見つめ返した。

そのままゆっくりと顔を近づける。

私はつぶやいた。

「ごめんね」


唇が触れ合った瞬間、私の心臓は動かなくなった。

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―初恋― 紫雲 @shirokuma_cham

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