2.いやいや、ちょっと待ってくださいよ!?







 ――本日のホームルームは、やはり学園祭について。

 担任はほぼやる気がなく、クラスの担当委員も型にはまった進行を行っていた。各クラスの要望を取りまとめたうえで、なるべく被りを減らして決めるらしい。

 一応は生徒の案も検討されるが、おおよそ学校に却下されるとか。ミスコンあるんだから、お前らそれで我慢しとけ、という意図らしい。



「えー……それでは次に、なにかやりたい人はいますか?」

「はいはいはいはーい!!」



 そんなこんなで、形式的に進行されていた時だった。

 ある女子生徒が空気を読まず――いいや、正確には空気を読めずに、元気いっぱい手を挙げる。その女子こと、知紘は委員に指名されると立ち上がり言った。



「コスプレ喫茶やりたい!!」――と。



 ざわめくクラスメイト。

 それを制したのは、様子を見ていた担任だった。



「静かに。……なぁ、天野? それは、本気で言っているのか?」

「あったりまえですよ、先生!! だって、見たくないんですか!?」

「見たい、って……なにを、だ?」

「タキシードを着る、えっちゃん」

「は……?」



 首を傾げる担任。

 しかし、ボクは感じ取っていた。

 クラスの一部の女子が、知紘の案に息を呑んだことを。



「いや、普通逆じゃないのか……?」

「ばっ……何言ってるんですか、先生。そこですよ、そこ! 普通は逆だろ、ってところがあるからギャップ萌えがあるんでしょうが!?」

「も、もえ……?」



 困惑する担任。

 彼はしばし眉間を押さえてから、こう言った。



「……いや。しかし、多数決次第だからな?」

「分かってます。だから今、みんなを説得しますよ!」



 すると知紘は売り言葉に買い言葉。

 何故か喧嘩腰に啖呵を切ると、先ほど反応した女子たちに語った。



「みんな、自分の心に素直になろう? さっき想像した人、いたでしょ。そして胸がときめいた人も、少なからずいたはずだよ……?」――と。



 彼女の言葉を聞いて、女子たちはまた息を呑む。

 エヴィは思ったよりも堂々としているが、事前に打ち合わせでもあったのだろうか。ボクは他人事のように思いながら、話を聞いていた。すると、



「そして男子! 見たくないの!? ――たっくんのメイド服姿を!!」

「はぁ!?」



 何故か急に、矛先がこっちに向いた!!

 ボクは完全に不意打ちを喰らって、思わず立ち上がる。そうなると、当然クラスメイトの視線を一身に集めるのだが、ある男子がボソッとこう言った。



「たしかに、アリだな……」――と。








 はい……?








「まぁ、せっかくのお祭りだしな」

「先生! 準備頑張るので、やらせてください!!」

「うおおおおおおお!! 杉本のメイド服ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」





 ――ちょっと待て。

 ボクがそういうより先に、クラスでは拍手喝采が起きていた。

 それをまとめるようにして知紘は、担任教師に向かってこう言うのだ。



「どうしますか、先生?」

「…………はぁ~……」



 すると彼は大きくため息をついて、こう答える。





「分かった。上には言っておくから各自、無理のない範囲で頑張ること」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」






 盛り上がる教室内。




「え、あの……?」






 その中でボクは一人、苦笑いを浮かべながら立ち尽くしていた。







 

――――

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新作ラブコメです!

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「クリスマスに『妹が欲しい』と冗談を言ったら、父親が何故か大喜びをしたんだけど……? ~そして当日、学園の高嶺の花が俺の義妹になりました~」


https://kakuyomu.jp/works/16816927859090617894

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