【4話 小さい罪】

 ニイナは道端に転がっている赤い空き缶を蹴とばす。


 続けて、赤い紙くずを拾い上げたら、すぐに放り投げる女の子。


 ニイナは周囲を見渡しながらため息をつく。


「お姉ちゃん、本当にお守り落としちゃったの?」


「うん」


「そっかぁ。それじゃあ、そろそろ見つかってもいいと思うんだけどねぇ、誰かに拾われてなければ」


 引きつった顔で頭を掻くニイナ。


 それから、電信柱の近くに落ちている赤い布切れを拾い上げる。 


「うーん、これはお守りかなぁ? いやいや、こんな簡単に見つけられるわけないよね?」


「それだよ!」


「えぇ!?」


「わたしのお守り!」


(えー、意外と早く見つけれちゃったよ!)


 ニイナは持っている赤いお守りを女の子に見せた。


「こんな目立つところに落ちてたんだけど、これで合ってるの!?」


「探してたやつ!」


「おーおー、そっかそっか、良かったぁ見つけられて」


 口の端を上げながら赤いお守りを女の子に差し出すニイナ。


(うーん、動揺しちゃってたら、見逃すこともあり得るかもね)


 女の子はお守りを受け取ると、小さく微笑んだ。


「ありがとう!」


「うんうん、どーいたしまして。無事見つかってよかったよぉ」


「……お姉ちゃんなんて人?」


「ん、優しい人?」


「お姉ちゃんの名前は?」


「え? ボクはニ……」


 ニイナは顔をこわばらせながら口の動きを止める。


(いや、今のボクは偽物だけどサラちゃんだ。好きな相手を真似るなら、徹底的に拘らないと! なりすましは良くないことだけど、この子にもサラちゃんを好きになってもらいたいなぁ)


 口の端を大きく上げながら片手を腰に手を当てるニイナ。続けて、もう片方の手を前に突き出して、人差し指を立てる。


「うーん、アタシ? アタシの名前はサラっていうんだー! よかったら覚えて欲しいなー。ちなみに、お姉ちゃんのお名前は何ていうのかなー?」


「シオリ」


「うんうん、シオリちゃんっていうんだー! そのお守りのこと大事にするんだよー! あっ、お母さんとお父さんのことも大事にしなきゃダメだからねー?」


「うん」


 笑顔を作りながら手を大きく振るニイナ。


「それじゃ、アタシはもう行くからねー! バイバーイ!」


「バイバイ」


 ニイナは両腕をまっすぐ上げる。すると、体が宙にわずかに浮かび上がった。続けて、両腕を横に伸ばすと体が前方に進んでいき、低空飛行しながら道路を移動していく。


 そして、十字路まで進んでいったら両腕を斜め下に下ろすと、ニイナの移動する速度が落ちていく。続けて、右腕を真下に下ろすと右方向に急旋回きゅうせんかいしていき進路を変えていった。

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