第18話 いや、催眠術って


 いろいろあったがようやく放課後、とりあえずこの地獄から抜け出せると俺は思っていたのだが……。


「なぁ石嶋」


「ん? げっ……」


 帰ろうと思っていた俺に吉田が話し掛けてきた。

 今現在一番話掛けてきて欲しくない奴なのに……。


「な、なんだ?」


「ちょっと放課後話し良いか?」


「いや、悪いちょっと放課後は用事が……」


「直ぐ済むからよ、中庭で待ってるから」


「あ、ちょっ!!」


 吉田はそう言うと直ぐに言ってしまった。

 予想はしていたがまさかこんな早くに呼び出しを受けるなんて……これはあれか?

 

『てめぇ良くも俺の女に手を出したな!!』


 的な感じで切れられて俺ボコボコにされるのか?

 それとも……。


『まさかあいつがお前の事を……でも俺は諦めないぜ、今日から俺とお前はライバルだ!』


 みたいなうざい感じの乗りで来るのか?

 どっちにしてもうざいな……。

 

「呼び出しか? 釘バット持ってくか?」


「なんでそんな物持ってるんだよ……」


「作ったけど捨てるのが面倒でな」


「物騒だからやめておく……」


 絶対にろくなことじゃないと分かっていても行かないと更に面倒な事になってしまう。

 ようやく地獄から解放されると思ったのにまさか別の地獄が待っているなんて……俺は仕方なく指定された中庭に向かった。


「よぉ、来たな」


「あぁ、話しってなに?」


「早くしろよな」


「なんだよ、一人じゃねぇのかよ」


「お前もそうだろうが」


 不安だった俺は井岡にもついて来てもらった。

 いやぁ、やっぱり持つべきものは友達だなぁ~。

 俺一人だったら吉田とその取り巻き二人にボコボコにされてたかもしれない。


「まぁ、いいや。聞きたいんだどさ、お前って何? 伊奈のこと好きなの? 嫌いなの?」


 あぁ、やっぱりその話ですよねぇ……でもなんて答えよう。

 シンプルに恋愛感情はありませんって言うか?

 でも、そしたら「じゃぁさっさとあいつを引き離せよ」とか訳の分からないことを言われそうだしなぁ。

 逆に「好きだよ」なんて言ったら「お前ごときは釣り合うわけねぇだろ」とか言われて突っ掛かってきそうだしなぁ。

 どっちに転んでも面倒そうだな。


「えっと……か、可愛いとは思うよ?」


「そうじゃなくて、好きなのか嫌いなのかを聞いてんだよ」


 ごもっともです。

 でもどう答えても面倒そうだからハッキリ答えるのが怖いんだよ!

 なんて事を考えていると隣の井岡が俺の脇腹を小突く。


「さっさと言えよ」


「わ、分かってるよ……」


 まさか味方にも催促されるとは……仕方ない、ここは正直に自分の気持ちを話しておくか。


「好きじゃないよ、てか正直あのドッキリのせいで印象は悪いよ」


「あぁ、あれか……んで付き合うの?」


「安心してくれよ、俺はそんな気は今の所ない。それに結構俺強めに無理だって断ったんだけど、堅山さんがあんな感じだからどうなるかは分からない」


「それじゃぁお前は付き合う気はないんだな?」


「あぁ、だから安心してくれよ」


「な、なんで俺が安心しなくちゃいけねぇんだよ!」


 あれ?

 こいつもしかして自分が堅山さん好きな事を周囲に上手く隠せてるとか思ってる?

 だとしたら全然隠せてないぞって教えてやりたいな、感情駄々洩れだし……。


「い、いやそんな事を聞くから好きなのかと思って……」


「お、俺は別にそんなんじゃねぇ!」


 顔真っ赤にしてそう言われても……。

 あぁ、だめだ。

 横の井岡が今にも吹き出しそうなのをこらえてる。

 

「てか、一体お前何をしたんだ? どうやってあの堅山を……」


「え? いや……別に特に何も……正直俺もなんで好かれてるのか分からないし……」


「嘘つけ! なんだ!? 催眠術か!?」


 いや、催眠術って……。

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