第17話 注目の的

「いやいや冗談でしょ伊奈?」


「冗談じゃないって、もう告ったし」


「はぁ!?」


 告った発言に吉田はかなり驚いていた。

 声の感じからして相当驚いているようだ。

 見えないけどクラス中の視線が自分に集まっているのを感じる。

 あぁ、嫌だなぁ……顔あげたくないなぁ……。


「ま、マジ?」


「うん、まぁ断られたけど」


「あぁ!?」


 今度は怒った様子の吉田の声が聞こえてくる……あいつ声だけで表情が分かるな……。

 

「え? じゃぁ何伊奈振られたの?」


「まぁそんな感じ」


「マジかよ、あいつもったいねぇ~」


「てか伊奈、もしかしてあのドッキリ嫌がった理由って……」


「まぁ、そう言う事。でも謝ったら許してくれたから」


 許したけどそれはた堅山さんを許しただけで、あいつらの事は許してはいない。


「で、でも振られたなら仕方ないな。新しい恋に進もうぜ伊奈」


 なんだか嬉しそうにそんな話をする吉田の声が聞こえてくる。

 こいつ分かりやすいなぁ……。


「まだ進気は無いかな?」


「え? な、なんでだよ? もう振られたんだろ?」


「簡単に諦めるなんて嫌だし、それに本人にもそう言ったし、だから今日から私は帰りは石嶋君と帰るから」


「い、いやいや! そ、そんなの石嶋に迷惑だろ?」


 お、吉田が珍しく人の迷惑について考えたな。

 でもお前告白ドッキリについては俺の迷惑とか一切考え無かったよな?

 

「だから石嶋も納得してるって、それに私が一緒に帰りたいって我がまま言ったの」


「で、でもよぉ……」


「私が良いんだから良いでしょ? それになんで吉田からそんな事言われないといけないの?」


「そ、それは……」


 言葉に詰まる吉田。

 そんな二人の会話を俺は寝たふりをして全部聞いてしまった。

 これは今日の昼休みに何かあるかもな……。


「おい、なんかおもしれ―ことになってんじゃん」


「うるせぇ……」


 俺が起きている事に気が付いている井岡は楽しそうな声で俺に耳打ちをしてきた。

 こうして俺と堅山の関係はクラス中に広まった。

 そして昼休み前には隣のクラスまで広まったらしい。

 ちなみにその原因は堅山の友達のカースト上位層の女子二人。


「はぁ……なんでこんな事に……」


「何言ってんだよ、かなり愉快な展開じゃねぇか」


「どこがだよ!」


 昼休み、俺は井岡と共に中庭で購買のパンを食べていた。

 いつもはクラスで食べるのだが、今日はクラスの視線が痛いので中庭で食べている。


「あの吉田の反応は愉快以外のなにものでもないだろ? 格下に見てたお前に好きな子取られそうなんだからあんな顔になるのも分かるけどよ」


「別に俺は取ろうとなんてしてないんだが……」


「んで、これからどうするんだ?」


「どうって……もちろんいち早く堅山さんに諦めて貰うよ」


「まぁそうだろうな、お前らしい解決法だ。でもよぉ……」


「なんだよ?」


「お前ってマジで堅山のこと好きじゃないの?」


「え?」


 そりゃああんなエロゲ……じゃない、ギャルゲーに出てくるみたいな美少女は好きだ。

 しかし、好きとは言ってもloveの方じゃないlikeの方だ。

 可愛いと思うし、パンツを見たいとも思うが恐らくその好きに愛はない。


「あぁ、好きじゃないよ」


「ふーん、なら良いんじゃね? でもよぉ、自分の気持ちには素直になれよ?」


「何が言いたいんだよ?」


「余計なお世話かもしんねーし、正直俺はあの女があんまり好きじゃねぇからこんな事は言いたくねぇけど、友達からでも始めて見るのもありなんじゃねーのって言いたいんだよ」


「なんでお前がそんな事を言うんだよ?」


「いや、なんかお前がだんだん堅山を気になり始めてる気がしてな。こんな事を言って見たくなったんだよ」


「なんだそれ? 俺は別に堅山さんのことなんて……」


 とは言いつつも正直少し良いなぁと思いつつあった。

 だって、あそこまで言ってくれるんだよ?

 まだ少ししか話ししてないけど、やっぱりかなり可愛いし、俺の事も真剣っぽいし……。

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