第3話 君がいると足手まといなんだ。

翌日も通常シフトだ。

シフトは夕方4時からなので、それまではゆっくりできる。


朝9時に起きてサンドイッチを食べ、洗濯や掃除をして一休み。1時におにぎりを食べ、ちょっと昼寝でもしようかな、と思いつつぼんやりと窓の外を眺めていた。


すると「下着泥棒!まて~」という声が聞こえた。


見てみると、帽子にマスクに黒ずくめの服、といういかにも怪しげな恰好の男が、パンツを持って走っていた。


なんだか平和だな、などと不謹慎にも思ってしまった。


とその時、突然男が吹っ飛んだ。 何かと思うと、緑と白を基調にしたセーラー服とナース服を足して二でわったような服を着た、背の高い女の子がその男をけり上げたのだった。


男は吹っ飛んだ拍子に下着を手放してしまった。緑の音の子はそれを掴んだ。


吹っ飛んだ男は、自分がパンツを持っていないことに気づいたが、追っ手が来ると思ったのだろう、そのまま立ち上がって逃げた。泥棒を追い掛けていた女性は、この女の子にお礼を言い、パンツを持ち帰っていった。


ふと気づくと、その緑の女の子は居なくなっていた。



もしかして今のは夢だったかな、と思いつつ俺は仮眠を取った。4時から12時までのシフトなので、1-2時間くらい仮眠をとっておいたほうがいいのだ。


3時半に起きて支度をし、出勤する。部屋を出て鍵をかけ、鍵を郵便受けに入れて出勤する。と言っても1分で到着なのだが。


今日のシフトは、途中まで近所の女子大生の有馬マリアちゃんと一緒だ。スタート時間が違うので、彼女はすでに店でシフトに入っている。


俺も着替えてタイムレコーダーを押す。そのうち、これも携帯のQRコードに変わるらしい。ただ、システムの変更はある程度オーナーの支払いがあるので、うちの店長はちょっと導入を渋っているようだ。


とりあえず、バックヤードに入荷品が積んだままになっているのでそれを処理する。人手不足なので、生鮮以外はどうしても後まわしになってしまうのだ。


店に行くと、マリアちゃんがレジ対応をしているが、明らかに待ち人数が多い。どうやら、客がおでんの注文で時間を食っているようだ。


俺は自分の名札でレジを開け、「お待ちのかたこちらへどうぞ」と声をかける。

並んでいるのは男子高校生が多く、明らかに失望した顔をしながら俺のところへ来る。


これだから若い男は。


まあ、俺も25だから若い男と言えなくもないか。アラサー女性やアラフォー女性からすればね。


一段落したところで、女子大生バイトのマリアちゃんが声をかけてくる。

「ありがとうございます。助かりました。」


「どういたしまして。ところで、肉まんが切れてるね。」俺は指摘する。


彼女は慌ててバックヤードに行き、冷凍庫から肉まんを出してきた。

「これ、20分は売らないように注意しないと…」と独り言のように言った。


俺はその言葉は聞こえなかったふりをして、話かける。

「マリアちゃん、今日のシフトは何時まで?」


「8時です。」マリアちゃんは答える。ボブカットの明るめの茶髪で、背は150くらいか。顔は可愛らしい感じだがちょっと頬がぷにぷにしている。そして、コンビニの制服を着ていてもわかる、かなりの巨乳だ。


笑顔がチャーミングで、いかにもイマドキの女子学生、という感じでモテそうだ。まあ、彼氏がいるかなんて聞いたらセクハラになってしまう可能性があるので、出来る限りプライバシーには立ち入らないようにしている。


そんな俺の気遣いを知ってか知らずか、彼女はあっけらかんといろいろ聞いてくる。


「愛田さんは彼女いるんですか?」とか「愛田さん、大学卒業したのにどうしてバイトしててるんですか?」とか、あまり聞いてほしくないことをずばずば聞いてくる。こっちは適当にはぐらかしているのだが、返事に満足できてない証拠に、また同じことを聞いてくる。


今日あたりもまた聞かれそうだな。

そう思ったが、今日の彼女の話は違っていた。


「例の通り魔事件、まだ犯人捕まってないみたいですね。この辺も物騒ですね。」


確かに最近ちょっと物騒だな。アルケゴスがケガしたのも関係あるのかもな。


「ああそうだな。そういえば今日はその辺に下着泥棒がいたよ。」

さっきの話を思い出して俺は言ってみた。


「何ですかそれ、いやらしい。愛田さん、やめてください!」

マリアちゃんが半分怒った。


そう言われても。俺が下着泥棒したわけじゃないし。

そこで客が来たため、会話は中断した。


さすがに客がいるところで私語はしない。それくらいの常識は二人ともわきまえているのだ。


八時になり、マリアちゃんが上がった。

これから十時までワンオペだ。客も少ないし、まあいいのだが。



と思ったら、客が飛び込んできた。よく見るとマリアだ。


「マリアちゃん、どうしたの?」俺は声をかける。

「変な怪獣みたいなのがいたの。本当よ。もう怖くて逃げてきたの。とてもじゃないけど帰れない…」彼女は泣きそうだった。


俺は彼女をバックヤードに入れ、コーヒーを出してやった。

店長の方針で、福利厚生として一日一杯はコーヒーを飲んででいいことになっている。


これは今夜の俺の分だ。彼女が今日飲んだかは知らないが。


「まあ、これでも飲んで、、落ち着いて。10時まで待っててよ。店長が来たら、相談して、どっちかで家まで送ってあげるから。」


彼女はぶるぶる震えながら涙目でうなずいた。


それはさておき、客がいない今のうちに発注を済ませよう。

といっても、基本的に端末に出てくる品を承認するだけの作業だ。


もちろん、増やしたいときは増やすことがてきる。ただ、機械に逆らって多く発注し、廃棄が多くなってしまうと本部からペナルティがくるから注意が必要だ。


そうこうしているうちに客もぼちぼちやってくる。少なくとも、彼らの雰囲気から見て、マリアを襲った怪獣みたいなものはいないようだ。 カラオケ帰りか、それとも塾帰りか、という感じの女子高生も来ている。


客の流れが落ち着いたところで俺はバックヤードを見る。

マリアは机に突っ伏して眠っていた。恐怖と疲れがあったんだろう。

風邪をひかないように、非常用の毛布を出して背中からかけてあげた。


そして、弁当の廃棄作業を行う。今夜も焼き鮭弁当にしよう。廃棄するものをすべてチェックし、ビニールに詰める。俺が持ち帰る鮭弁当とおにぎり3つを横にどける。


10時前に店長がやってきた。店長はこのまま朝までシフトに入る。俺が帰ったらワンオペだ。


本当なら常に従業員が3人以上いることが望ましいのだが、外国人留学生が減ったりして、人で不足がはなはだしいのだ。


俺は、店長にマリアちゃんのことを話した。

「そんなことがあったなら、すぐに呼んでくれたいいのに。私もすぐに来たよ。マリアちゃんにうちで落ち着いてもらってもよかったしね。もし今度こんなことがあったら、すぐに連絡してね。シフトなんか気にしないで。」



いい店長だなあ。つくづくそう思う。


俺は、マリアちゃんを起こした。

気が付いたマリアは、ちょっとばつの悪そうな顔をした。そして、更衣室に飛び込んでいった。どうやら化粧直しをするらしい。


結局、俺が彼女を送ることになった。彼女のアパートは徒歩20分くらいのところだという。あんなことがあった後では、一人で帰るのは不安だろう。


静かな夜道を歩く。何も言わないと気まずいので、何とか話題を探す。

「マリアちゃんは休みの日は何をしているの?」俺は聞いてみた。


「別に大したことはしてません。基本的ににインドア派なので。」


会話が終わてしまった。考えてみると、俺も普段大したことはしていない。話せるようなことがないのだ。


と、その時、突然唸り声のようなものが聞こえた。

さっきマリアを襲ったやつかもしれない。俺は身構えた。


すると、俺たちの周りの風景が急に変わった。まるで、どこかへ飛ばされたようだ。そして、不思議なエフェクトがぐるぐる周りながら広がっていく。


マリアが茫然と立ち尽くす。

「まさか…魔物? ネコカレー?」


なんのことだかよくわからない。だが、やばそうな気配はガンガン伝わってくる。

「とにかく逃げよう。」俺はそう言って、マリアの手をつかんで走り出そうとする。


だがその怪獣みたいなものは大きく長いため、我々の進路まで尻尾が届いてしまった。


逃げられないにしても、少なくともマリアを守らなければ。 俺は気休めに持ってきた傘を持ち、怪獣らしきものに立ち向かおうとする。


たぶん、俺が気を逸らせば、マリアは逃げられるだうお。


「俺があいつの気をそらすから、マリアちゃんはその間に逃げてくれ。」俺はマリアに言う。

「でもそれじゃあ愛田さんが…」マリアが首を横に振る。


俺はとにかく彼女を逃がしたかった。

「いや、俺一人なら何とかなるんだよ。君がいると足手まといなんだ。早く俺から離れてくれ。」


マリアは涙目だ。

「でも…」ぐずっている。本当に足手まといだな、とイラっとした。


その度時だった。突然、「待ちなさい!」という声がした。


声のほうを見ると、そばの民家の屋根の上に、黄色と白のひらひらがついたミニスカドレスのような服を着た少女が立っていた。


服の雰囲気がヒーラーGのものと違うので、別の魔法少女さんかもしれない。


「やっぱり…ナミ!」マリアがつぶやく。


その少女は、長く伸びた鎖のようなもので怪物を縛りあげ、大声で「ザ・フィナーレ!」と叫ぶ。


すると、彼女が右てで空に掲げたスティックから、光の渦が飛んでいき、怪物に衝突する。

すると、怪物はそのまま消滅した。


「す…すごい。」俺は思わずつぶやいた。


マリアは「凄い!凄い!こんなのありえない!」凄い!」と興奮している。


ふと気が付くと、あたりは元の道に戻り、魔法少女も居なくなっていた。

あれは夢なのか? だが、マリアの雰囲気からして、マリアも見ているはずだ。


いったい、、何が起こっているのだろう。


ーーー

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