第2話 愛の力で正義を守る



ヒーラーGと名乗る不思議な仮面少女は、俺のほうを見る。

俺はあまりのことに、言葉を失っていた。


すると、横にいる昨夜の猫が声を上げた。



「黙ってないで、何か言ったらどうなの?」


なんと、あの猫がしゃべったのだ。

超常現象の話はよく聞くが、なんと猫がしゃべるとは!


俺は驚いて叫んだ。

「ね、猫が喋ってる!ありえない!」


金髪のミニスカートの女の子はすかさず突っ込んできた。

「そっち? 驚くのそっち?」


俺もやっと正気に戻る。

「えっと、そのヒーラー爺さんがなぜうちに?爺さんの割りには、若そうに見えるし、爺さんよりむしろ婆さん。でも若い婆さんだし…」


俺はぶつぶつ言う。

半分現実逃避だが、


「あのねえ。私の設定は14歳よ!この仮面を付けてるとわからないかもしれないけどね。」」

その女の子はあきれたように言った。

だが、顔が見えないから、本当の女の子かどうかはわからない。


「いやもしかしたら変態ジジイがミニスカ履いているのかもしれない。」

俺は言い張る。なんか楽しい。


「あのねえ…」ヒーラーGさんはあきれたような顔をした。


「ミニ、ゴールドになりなさいよ。」黒猫がヒーラーGに言う。


「仕方ないわね。まあ、どうせ取るつもりでいたし。」

彼女はそう言うと、Gの仮面を外した。


まごうかたなき美少女が現れた。美しい金髪、ぱっちりした目に茶色い瞳。ばっちりアイメイクしている。。通った鼻筋と小さいけど可愛らしい口。全体的に、まだあどけなさを残している、大人になっていない美少女、という言葉がふさわしい。


どこから見ても、文句のつけようのない美少女だ。


彼女はくるりと回って、ポーズを取る。

例によって、スカートはひらひらするが、見えそうで見えない。


さっきとは違うBGMが流れる。

するとなぜか少女が一度セーラー服に戻り、そうしてBGMの中でバックが光り、彼女の服が少しずつ変わっていく。

そして金のスカートがきらりと光る。


彼女は唱える。


「きらりと光る金のミニ

 常に忘れず美の探求 

 愛の力で正義を守る

 ヒーラーゴールド、ここにあり!」


金色のバックが輝いた。


ポーズを取った彼女は言う。

「魔法少女連合 正義の味方本部 ヒーラーゴールドよ! こっちは聞いたことない?」


俺はおそるおそる答える。

「すみません、まったくわかりません。それで、そのヒータ―ゴールドさんが、何の御用ですか?」


美少女がすかさず突っ込む。

「ヒーターじゃないわよ! 人をデ〇ンギみたいに言わないでちょうだい! ヒーラーゴールドよ。知らないの?」


「すみません、本当にまったくわかりません。魔法少女さんですか。」さっき魔法少女組合とか言ってたからとりあえず聞いてみた。


「そうね。魔法少女よ。私一人じゃわからなくても、癒し美少女ヒーラーブームって聞いたことないかしら?」


そう言われれば、ヒーラーブームは以前聞いたことがあるような気がする。


「あの、ヒーラーブームは聞いたことあるような気がします。ただ、そういうの全然わからないんですが。」


「美少女アニメよ。見たことないの?」


「すみません。うちずっと貧乏だったんで、アニメとか見たことなかったです。」俺は白状した。


「使ぇないわね。まあいいわ。細かく説明してあげる。」


そういいながら、彼女は時計を見る。


「そういえば、先にピーチサワーもらってるわよ。おつまみ何かある?」


「枝豆買ってきました。それでいいですか?」

「いいわ。早く持ってきてちょうだい。」

わがまま娘って感じかな。


「あたしの魚とミルクも忘れないでね!」黒猫が言った。

はいはい。お前の分はちゃんとあるから、待ってくれ。



俺は買ってきた弁当からサバを取り出し、少しお湯をかけて、塩分を落とす。

それから小骨を抜いて小皿に移す。ミルクも小鉢に入れて、二つ並べてお盆に載せる。


そのあと、枝豆と弁当の残りと発泡酒もお盆にのせ、それら持って居間に戻る。

猫の分を床に並べ、枝豆はこたつの上に置く。


ちなみに、うちは言った通り1DKで、ダイニングキッチンの他に一部屋ある。その居間の真ん中に座卓替わりのこたつがあり、普段はそこで生活している。寝るときはこたつではなく、布団を敷いて寝る。


美少女はこたつに座って俺が昨日買って冷蔵庫に入れて置いたピーチサワーを飲んでいる。


「どうぞ」俺は枝豆を彼女にすすめる。


そうしながら発泡酒をあけ、飲もうとする。


「乾杯は?」美少女が聞く。



「そうですね、乾杯しましょう。えーと、よくわからないけど、魔法少女に乾杯!」


そういってとりあえず乾杯した。

独身男性の部屋に若い女性と二人きり。さあ、何が起こるんだ。ドキドキわくわく。


と思ったけど、よく考えてみると、相手は正義の味方の魔法少女だ。たぶん、必殺技とか持っているだろう。触らぬ神にたたりなし。イエスロリータ、ノータッチ。


彼女は言った。

「詳しい話しようかと思ったけど、面倒になっちゃった。明日にするわ。」

…明日も来るのか。


そういえば、設定は14歳って言ってたな。酒飲んでるけどいいのかな。あ


「私のこともちょっと話しておくわね。 最初の姿は、ヒーラーG。そして、現在の姿は、ヒーラーゴールドよ。それと、世を忍ぶ仮の姿として、女子中学生の金乃美似(きんのみに)ってことになっているわ。」


わかったようなわからないような。


「あの、ヒーラーGとヒーラーゴールドはどう違うんですかね?」

俺は尋ねた。


ヒーラーゴールドは答える。

「会社が違うかな。番組が違うというか、メディアが違うと言うか…。」



何ですかそれ?

まあいいや。


俺は弁当を食べながら発泡酒を飲み、ヒーラーGは枝豆をつまみにピーチサワーを飲む。

猫は魚を食べている。


「ヒーラーGは、コミックの連載なのよ。それが人気になったんで、どうせなら人数増やしちゃえ、というので5人にして、主人公があたしじゃなくてヒーラームーブに変わったの。ヒーラーGは私しか出ないから私が主人公ね。あたり前だけど。」


そういいながら枝豆をつまんでいる。。


猫が言った。

「私はアルケゴスっていうの。ヒーラーたちの相棒よ。もう一匹いるけど、その子はだいたいリーダーのヒーラーブームの専属ね。 あなたの名前は?」


会話ができる。コミュ障っぽい俺としては嬉しい。


「愛田一郎です。裏のコンビニでバイトしている。二十五歳。独身。彼女なし。特技は、何もしないで時間を過ごせることかな。こんな感じでいいかな?」


「ま、名前は知ってたけどね。」ヒーラーGが笑う。


「25歳なの?じゃあニートみたいなものかしら。」猫のアルケゴスが言う。


「なかなか手厳しいね。大学を出て、ブラック企業に就職して、2年で体を壊して追い出されたんだよ。学生時代にバイトしていたここのコンビニの店長に相談したら、ここでバイトするように勧められたんだよ。


ここのアパートも店長のものだよ。ころがりこんだみたいなものだけど、感謝しているんだ。この部屋にしても、布団以外はだいたい前の人がおいていったものだしね。」



「そうなの。まあ、正直に働いているのはいいことね。私たちは、あなたのような善良な一般市民を守るために戦っているのよ。」


猫のアルケゴスが言う。 彼女のほうがずっとしっかりしている気がする。


「だいたい、昨夜も戦ってたんだから。思ったより抵抗されて、ケガしちゃった。生意気な連中なのよ。」


悪の組織だろうからなあ。向こうだって必死だろう。殺されないでよかったと思うほうがいいよ。


俺とアルケゴスの会話が続く中、ヒーラーGは静観している。というか、いつのまにかコンパクトを取り出して、アイメイクを始めた。そこまでしなくてもいいのになあ。十分かわいいんだから。


化粧直しを終えたヒーラーGが言う。

「あなた、コンビニで働いてるのよね。」


「まあそうだけど。」


「最近のコンビニスイーツは美味しいんですってね。明日は、おすすめのコンビニスイーツを二つ買ってきてね。」

ヒーラーGが言う。


「なんで二つなの?」


「私が好きなほうを食べるから。あ、二人で半分ずつもいいわね。じゃあ、もう夜遅いし、そろそろお暇するわ。」

ヒーラーGが言う。


「あ、明日もだいたい今日くらいに来るからね。」アルケゴスが言う。


「今日ぐらいったって、俺より先に家に入ってたろ。なんで鍵の場所知ってるんだよ。」


俺は突っ込んだ。


「あら、あなた、私を抱きしめながら鍵を出したじゃない。見てたのよ。」アルケゴスが平然と言う。


「…まあいいよ。明日も、12時過ぎに帰ってくるからね。コンビニスイーツ二つ買ってくるよ。」


「あたしのお魚もね。」アルケゴスが付け加える。


「はいはい、わかったわかった。」俺は答える。


「じゃあね、おやすみなさい!」

そう言って魔法少女と猫は去っていった。



ーーー

ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。


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ちょっとなりふりかまわず書いてみました。















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