第10話「治療の鍵」

少女2人を抱えたまま走るのは、中々に辛いものだが、俺はそれどころではなかった。

さっきから姉の方は心拍数がどんどん下がっていて、いつ死んでもおかしくない程に弱っている。俺はレベルが上がったことによって、スキル「回復」(ヒール)を覚えていたことに気づき、何度も少女2人に「回復」を行っていたのだが、姉の方は、傷が治ったからどうだと言う話ではもう無くなっていた。

だが、病院にさえ連れていけばまだ助かるのだ。この小さい命は助かる可能性がある。

そうして、俺は目的地である町に入り、病院を探して走り続けた。

そして、ようやく病院を見つけた。

俺は病院の医者に声をかけた。

「頼む、お願いだ!この2人を助けてやってくれ、死にそうなんだ!あんたなら治療して助けてやれるはずだ。」

だが、医者から帰ってきた返事はあまりにも酷いものだった。

「私が?この娘二人を助ける?何を馬鹿なことを言っているんだい君は?この2人は奴隷だろう。奴隷など助けてなんになる?他をあたるんだね。」

意味がわからなかった。こいつは何を言っているんだ?奴隷だから助けない?他をあたれ?ふざけるなよ!それが医者の言うことなのか?命を預かる奴の言うことなのか!

「てめぇ、それでも医者か!」

俺は医者の顔面を思いっきりぶん殴った。

医者は俺の方を睨んで言った。

「お前、医者である私に手を出したな!誰か警備兵を呼んでくれ!奴隷を連れた知らない男が暴力を振るってきたんだ!」

直ぐに警備兵がやってきたが、俺はその警備兵を蹴り倒して、逃げ出した。

だが、医者に見て貰えないとなると、この子達は本当に死んでしまう。どうしようもない..助けられない...俺は最低だ。

絶望している俺に、突然女が話しかけてきた

「その2人私が治療してあげる。そこに寝かしてあげて、直ぐに治してあげるから」

俺は、2人が治るならと、女の言う通りに2人を寝かせた。すると、この女のアビリティだろうか、2人の血色がどんどん良くなっている。心拍数の方も少しずつ良くなっている。

治療が完了したのだろう。女が言う。

「「修復(リペア)」それが私のスキル。ありとあらゆるものを修復することが出来る能力よ。この2人の病気、細かな傷、内蔵、全てを元の元気な状態に戻れるよう修復したわ」

「ありがとう、本当にありがとう」

俺の目からは、何年ぶりだろうか、涙が出ている。心の底から安心したからだろう。

「とりあえずこっち、早く来て、すぐに追ってが来ると思います。 」

女にそう言われて、俺は2人を抱えて女について行く。

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