4.ゲームの舞台

 恋愛シミュレーションゲーム『Magical stories』のストーリーは、主人公が魔法学園に入学する所から始まる。

 主人公であるメルティナは、十六歳になる年、その高い魔力と知能を買われて、王立魔法学園に入学することになった。彼女は、そこで出会った男性と恋に落ちる。それが、ゲームのあらすじだ。

 同じ年に、アルフィアも魔法学園に入学することになる。彼女の婚約者であるバルクド様もそうだ。

 そこで、アルフィアはメルティナを虐めて、メルティナとバルクド様が恋に落ちる。それが、バルクド様のルートのストーリーだ。


「そして、そのルートの最後で、私は国外追放される……」


 バルクド様のルートの最後に待っているのは、私が国外追放されるということである。メルティナに対する悪辣な行いが公の元に晒されて罰せられた。これが、このルートのアルフィアだ。


「それなら、当然、メルティナを虐めなければいいわよね……」


 非常に単純な話ではあるが、メルティナに危害を加えなければ、私が国外追放になることはないはずである。理由がないのだから、国外追放になるはずはない。


「でも、それが確実であるかどうかは、よくわからないし……」


 だが、私が知っているのは、バルクド様のルートの話だ。それ以外のルートで、アルフィアが何をした結果、罰せられたのか知らない。

 だから、完全に安心できないというのが、現状である。とにかく、私はゲームのアルフィアとは異なる生き方をするべきだろう。


「まあ、とりあえず、行ってみるしかないということよね……」


 私は、ゆっくりと馬車から下りた。目の前には、多くの人間と大きな建物が見える。

 ここは、魔法学園。私が、今日から通い始める場所である。

 今日は、入学式の日だ。様々な人達が、辺りを行きかっている。その中に、見知った人物を見かけて、私はゆっくりとそちらに近寄っていく。


「バルクド様、お久し振りです」

「ええ、お久し振りですね、アルフィアさん」


 見つけたのは、バルクド様だった。婚約者であるため、彼には挨拶をしておかなければならなかったのだ。

 彼も私と同じように、今日からこの学園に通う。やはり、ゲームと同じようにこの世界は進行しているのだ。

 といっても、ここがゲームの世界であるとはとても思えない。私は、今までの約十五年間の人生をしっかりと認識している。記憶もあるし、ここが現実であることを疑う理由はない。

 だが、ゲームの世界と同じように私が人生を歩んでいるのもまた事実である。だから、私はゲームをした知識を使い、ゲームとは違う人生を歩んでいこうとしているのだ。

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