嘗ての認識

 現在の自分は男性でも女性でもない、といった認識である。では何故学生時代は男性になりたかったのか。

 それは恐らく、「女なのだから」という前提で強要されることが多く、それが嫌だったのだろう。

 自分の父は、結構考え方が古い人だった。女だからお淑やかにしろ、女だから料理をしろ、女だから率先して母の手伝いをしろ……まぁそういうことを割と言われてきたわけである。

 とはいえ、自分はそれで「はい分かりました」と頷くタイプではなかった。女なのだからと言われることにわけも分からず抵抗感を抱いていたし、そもそも「母の手伝いをしろ」に関しては、「兄の方がいいじゃん」という認識だったのである。

 というのも自分は非常に鈍臭かった。言われたことをすぐ理解できない、すぐ行動に移せない、あれをとってと言われてもどれのことを言っているのか分からないといったタイプだった。そして出来ないと癇癪を起こすタイプだった。

 一方兄は割と要領がよかった。母の指示もすぐ理解したし、ちゃんと効率的に動けるタイプだった。今でも大体のことをそれなりにできる人である。漢字と英語は死ぬほど苦手だったが。

 そのため、料理や掃除をする母の立場からすると、例えば「そこの醤油とってくれる?」で、醤油がどこにあるかわからずうろうろして困っている自分よりも、すぐに見つけて手渡してくれる兄のほうが楽なわけである。

 だから母は何か手伝ってほしいときは兄を呼ぶが、娘にそういう手伝いをさせろと思っている父はそこで怒る。だから自分も呼ばれるが、自分にすることは特にないため台所で暇を持て余すわけであるし、例え手伝ったところでできないと癇癪を起こしたり、そうでなくても不機嫌になったり泣いたりする面倒な子だった。そりゃ母だって楽に手伝いを頼める兄の方がいいに決まってる。

 そんなだから、居間にいたら父に言われて手伝いに行くが、母に特にやる事は無いといわれ居間に戻り、また父に怒られ……みたいなバグもよく起こった。

 こういうことから「自分が次男だったらこんな思いしなくてよかったんじゃないか」と思うこともあったのだ。

 これが全ての理由ではないが、要因のひとつではないかと思うのである。

 あと、親戚の家でいとこ達と遊んでる時、女だからって理由で手伝いに呼ばれてゲームを中断せざるを得ないとかね。あれ地味に腹立つ。全員ゲーム中断させるなら分かるんだが、女子だけ手伝わされるの非常に嫌なんだわ。男子も女子も全員呼んで全員手伝わせろ。

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