13日 アドベントじゃんけん

「ずるい、ずるい、にいちゃんずるい!」

 弟がアドベントカレンダーの前でじだんだ踏んでいる。

 またかよ、うんざりだ。

「ずるくないだろ、今日は偶数の日だからにいちゃんの番」

 ぼくは今日の日付をピっと指さす。


 お菓子の箱みたいなアドベントカレンダーは、1から25までの数字のドアがある。ドアの中はチョコかキャンディーだ。弟と毎日、じゅんばんこでドアを開けることになっていた。


「だってグーで勝ったのボクだもん! ボクの番!」

 弟はまだわめいている。なに言ってんだこいつ。

 たしかにジャンケンはしたけど、グーで勝ったから? はあ?

 無視して今日のキャンディーを口に入れようとしたぼくは、まてよと思った。


「おまえさ、偶数のぐうってジャンケンのグーのことだと思ってる?」

 うん、と弟は真剣な顔でうなずいた。

「じゃ、奇数のきは?」

「チョキのキ!」

 ぶはっ。これは笑うしかないだろ。ぼくが偶数奇数のことをせつめいした時は「しってるよっ」なんてえらそうに言ってたくせに、やっぱりわかってなかったんだな。だって小2だもんな。


「じゃあさ、じゃあさ」

 ぼくはおもしろくなって床にすわった。

「パーは何数?」

 うーん、と弟は考え込むポーズをしたあと、自信まんまんの顔で言った。

「ぱぁ数!」

 ぱぁすうう! ぼくはあぐらをかいたまま床にひっくり返って笑った。


 

 

「じゃーんけーんホイ! あいこでホイ! ホイ! ホイ!」

 なかなか勝負がつかない。12月13日、今日から新ルールでアドベントカレンダーを開けるから負けられない。

 グーで勝ったら今日のぶん、ドアを開ける。

 チョキで勝ったら2日続けて開ける権利がある。

 パーで勝ったら? ぱあ数の日なので、二人でぱぁぱぁダンスをして勝負をつける。ぱぁぱぁダンスは弟が思いついたアホなダンスだ。あまりにアホすぎて、ときどきお母さんにストップをかけられる。


「あいこでホイ! あいこで……なあこれ、キリがないから10回勝負とかにしない? 引き分けってことで」

「やだ」

 弟はえらそうにポーズをきめて答える。

「オトコのしょうぶに引き分けなんかないんだぜっ」

 どこで聞いたんだそんなセリフ。


 あ、でもこいつが小5になった時に「偶数はグー、奇数はチョキ」とか言い出したらどうしよう。「ぱあ数」なんて教科書のどこにもないぞ。


……面白いからそのままにしとくか?


 



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