第7話 ラピス捜索隊
昨晩のT.S.O.、ギルドの仲間たちと遭難したラピスを捜索に出た時のこと──
うっそうとした森林に挟まれた山道、しかも、濃霧の天候エフェクトまで発生してしまい、はやく見つけ出さないと面倒なことになりそうな雰囲気だった。
「ねー、ラピスちゃんが死んじゃったのって、このあたりだよね」
「おーい、ラピスちゃーん返事してー……って、ムリだよね☆」
危機感の全くない、いつものノリの双子は放っておいて、残りのメンバーであたりの探索をはじめる。
とはいっても、内心では僕も全く心配していなかった。経験値ロストのペナルティ無しで復活させることができる
また、それとは別に死亡時に、装備やアイテムの所有権がリセットされて、その場に放置されてしまうという仕様もあるのだが、このあたりはモンスターの強さの割に目立った報酬もない、いわゆるしょぼいエリアだと認識されている。そのため、このあたりを訪れる他のプレイヤーも少なく、盗られてしまう心配もそれほどない。
案の定、数分も経たないうちにギルティが声を上げた。
「あ、これってラピスさんの装備ですよね! こっちです!」
「間違いないです、この武器と防具はラピスさんのモノですわ」
自分だけではなく、他人の装備にもこだわるサファイアさんが
だが、おかしい。
数秒の差で、パーティ全員が同じ認識にたどり着く。
「……ラピスちゃんがいない」
そう呟いたのは、
──まぁ、男キャラの露出は正直どうでもいいんだけど。
たぶん、イズミの中の人は女の子っぽい、かつ年下なので、あまりツッコまないようにしている。
などと集中を乱している僕をよそに、イズミは獣人族の特徴である大きめのネコミミをピクピクさせながらあたりの気配を探っていた。
金色の装飾がついた白い鎧ににシンプルながらも上質そうな青色のマントを纏ったクルーガーさんが僕の横に立つ。
「もしかするとラピスさん、ログアウトしてしまったのでしょうか」
フルフェイスの兜の
まさに金髪碧眼の好青年という容貌で、職業も聖騎士という典型的なヒーローというか英雄というか王子様といったイメージ。
「うーん、そうかもしれませんね。逆にリアルの方でなんかあって、ログアウトしないといけなくなって、その時に襲われちゃったとか」
「あはは……ラピスちゃんそそっかしいから、それありえるかもです」
イズミが複雑な笑みを浮かべた。
僕の次にラピスに振り回されている彼にとって、そのあたりは簡単に想像できるのだろう。
サファイアさんも軽く肩をすくめた。
「じゃあ、装備だけ回収しておいて今度ログインしたときに渡すようにしましょう……って、ミライちゃん、ジャスティスちゃん拾うだけだからね! 自分のモノにしちゃダメよ!」
慌てたように双子に駆け寄るサファイアさんの背中を見送りながら、他のメンバーに声をかける。
「あとでラピスにメッセージとばしておきますね」
僕がそう言うと、サファイアさんと一緒に双子の方へと駆けていったイズミが手を挙げた。
「あ、ボクも念のために連絡しておきます」
イズミはラピスとリアルでも付き合いがある。そのことはみんなも知っているので、対応としてはコレで問題ないだろう。
その後、他のメンバーと共に一度ギルドハウスへと戻ってからログアウトして、いつもと同じように、ゲーム外のメッセンジャーで連絡を取ってみたのだが……
☆
「まだ、返事が来てないんだよね」
僕は再び小さくため息をついて、列車の椅子にもたれかかる。
「そっかー やっぱりリアルでなんかあったのかな。そのあたりはイズミ君からの連絡まちかなー」
うーんと呟きながら首をかしげる
「……って、あ、クラスって、このメールか!」
学園からのメッセージボックスに新着マークがついていたことに今さら気づいた。
「あ、あったあった。完全にチェックし忘れていた」
ポンポンと指でタッチしてファイルを開くとクラス名簿が開き、確かに僕や花月、
「全員で六人か、クラスと言うより班って言った方がいいカンジだね」
「そうね、オリエンテーションでも説明があったけど、一人の教官が数人の学生を担当するチームって形みたいね」
常盤さんが淡々とした口調で続ける。
「原則、授業や実習は各専攻毎で実施されるけど、それ以外の活動はわざと専攻が被らないように学生を割り振ってるみたい、教官も含めて」
「いろいろ考えているんだねー」
感心したように頷く花月、ちなみに花月の専攻はサービス運営分野である。
「そうだね、残りのメンバーもみんな違うね。この
「おそらく留学生ね」
いつの間にか常盤さんも自分の情報端末を持ち出してリストを見ていたようだ。
「その二人は宇宙工学と
常盤さんの問いかけに、僕は言葉を詰まらせてしまう。
そうなのだ、宇宙学園は二人一部屋の全寮制で、同室の学生は原則として同じクラスに配属されることになっている。
「もしかして、ケンカでもしちゃった? 相性が良くなかったとか」
心配そうに表情を曇らせる花月に、僕は慌てて手を振って否定する。
「いや、そういうカンジじゃなくて、えっと、その……まぁ、あとで教官にも
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