全員集合!


「どりゃ! どりゃどりゃどりゃぁ!」


 校舎を出て、グラウンドへ。ガオンの連続パンチで複数の召喚獣が吹っ飛んでいく。


「手加減はしているが……これはさすがに骨が折れる……」


 どれだけガオンが筋肉オバケだったとしても、こうもうじゃうじゃとわいてくる邪気に当てられて正気を失った召喚獣たち。生徒は体育館に避難しているようだ。スピーカーからそうと流す声が聞こえていた。


「だけど、ここで召喚獣たちを少しでも何とかしないと、今度は生徒が集まっている体育館が狙われるかもしれない」


「ああ、確かにその可能性が大きい。この筋肉。限界を超えてでも押さえ込む!」


 だが、なにかおかしい……集まりすぎじゃないか?


 二年生三年生の方は分からない。だけどこの一年生の召喚獣だけでも、総勢二百体以上はいる。それがどんどんこちらに集まってきているようだ。


 と――


「見つけたああああああ!」


 その大声は、マリーロンの声だった。


「うおっ!」


 とっさに、彼女が放ってきた飛び蹴りをかわす。


「一人で逃げるな! このクソ野郎!」

「戦略的撤退だ! つーか仲間割れしている場合じゃないだろうが!」

「うるさい! あの後、私がどれだけ大変だったか!」

「そんなの知るか! お前も体育館に行けよ!」


「ウチのジュモックンは特別なんだからね! この状況をどうにかできるのも、この私しかいないでしょ!」


 と言い合いをしているところに。


「――ッ!」


 猛獣のような召喚獣が、こちらに飛び掛ってきた。


 やばい! 避けきれない!


 ドガンッ!


 飛び掛ってきた召喚獣が、突然の飛び蹴りであさっての方向へ吹き飛んでいった。


「マモルー!」


 飛び蹴りと声とともに、燕尾服を着たホーリードラゴンの擬人化した姿、アルフレッドさんに抱き抱えられて、シャルティが現われた。


「大丈夫!」


「ああ、なんとかガオンが押さえ込んでくれてる! 助かった」


「おお、アルフレッド殿! 共に戦ってくれるか! これは私も熱くなる!」


 アルフレッドさんから降りて、シャルティが近づいてきた。


「あら? あなたはどなた?」


「私はマリーロン。一年生で二体しかいない聖属性を持った召喚獣を持っているわ!」


「あら、じゃあ私と同じですわね。なにそのお人形さんは? それが召喚獣?」


「ボクジュモックン! ボクジュモックン!」


「……なにこれ?」


 あー、うん。俺も最初そう思った。


「このジュモックンの祖先は、世界樹ユグドラシルの枝から生まれたと言われる。聖なる木の召喚獣よ!」


「へえー」


 うーん……なんだか会わせてはいけない二人のような気配が――


「マモル!」


 アスカとアラタがこちらに走ってきた。


「お前たち大丈夫だったのか?」


「まあ、何とかね。ハーピィたちも邪気に耐性を持たせてあるから、僕たちも戦えるよ」


「回復役はキュアラちゃんがするから! 任せて!」


「おお! これは心強い! この筋肉も喜んでいる!」


「これで全員集合、ってことか」


 とりあえず、三人が無事でよかった。


 で――


「それでマモルこの人は誰?」


「このツインテールの彼女は誰?」


「あー、うん。そういえばお前たちは、面識がまったくなかったんだよな」


「私はマリーロウ! この一年生で二体しかいない聖属性を持った召喚獣を持っているのよ!」


「へーそうなんだ。スクロールがあればどうにでもなるのに」


「この木彫りの? 召喚獣なの?」


「あー! もうう!」


 マリーロウがその場で地団駄を踏む。


 こればっかりはフォローしきれないなあ……。


「まあ、それはそれとして、みなさま、やりましょうか!」


 シャルティの一声で、全員が邪気に当てられた召喚獣たちに向く。


「よし、じゃあ始めようか!」

「うん!」

「みんな、いきますわよ!」

「ここで戦果を上げれば、私の株も上がりまくりね!」


 一人邪念が入っているが、まあいいか。


「待てみんな!」


 ガオンが前に出て俺たちを制止した。


「この筋肉に考えがある」

「何をするんだ? ガオン」


 ガオンは息を整え、きっぱりと言った。


「この筋肉の私が、必殺技を出す! とても威力の高い攻撃であり、みなが巻き込まれしまう! 筋肉の後ろにいてくれ!」


「必殺技?」


「そうだ、この筋肉が全力を放つ。必殺技だ」

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