筋肉危機一髪!

「はっ!」


 俺は気がついた。


「お前、まさかプロテインなんてやっていたのか!」

「…………」


「そんなプロテインなんかをやって体を作っていたなんて、お前はその筋肉に恥ずかしくないのか! 見損なったぞ!」


「……くっ、すまない」


「すまないじゃねえよ! お前の筋肉は、プロテインでなければ作れなかったのか!」


「もう、普通の食事の摂取ではこの筋肉を維持できないのだ。だからプロテインを常飲していた。弁解もできぬ」


「そんな、お前はプロテインなんて飲んでいて、筋肉を誇らしげにしていたって言うのか!」


「……ねえ、マモル?」


「くそっ! ガオンの筋肉が、プロテインでできていたなんて……」


「ねえねえマモル」


 いつの間にか横にやってきたアスカが俺の背後から肩をたたいてくる。


「なんだよ! 今大変な時なんだ! ガオンがプロテインを摂取していたって言うんだぞ! プロテインを!」


「プロテインって、あのプロテインの事だよね?」


「なんてことだ! あの筋肉がプロテインで作られたものだったなんて!」


「いやだから、プロテインって、あのプロテインの事だよね?」


「え? プロテインって言う暗喩の、何かしらの違法薬物の事じゃないの?」


「しっかりしてマモル! マモルまでボケたら誰がツッコミを維持するの!」


「え? プロテインって、あの普通のプロテイン? 違法薬物の別称じゃなくて?」


「多分そうだと思うよ」


 アスカの声で俺は我に帰った。俺は一体何を言っていたんだ?


「あの高タンパクを摂取する、あの食品、プロテインの事だよきっと。ガオンさんはあの大きな体では、もう普通の食事では栄養が足りなかったのよ。だから弱体化しちゃったのよ……プロレスラーとかで聞いたことがあるけど、体を作るために、お腹が一杯で苦しくても、無理矢理大食いして体を作っているとか、そんなことを聞いたことがあるよ。ガオンさんもそう。あの体では、普通の食事じゃ栄養が足りないのよ」


「そうか、そうだったのか……」


「それに、マモル……マモルのせいでもあるんだよ!」


「なんで俺が?」


「私達、転移組は、給付金を国から支給されているけど、召喚獣には何もないのよ!」


「じゃあ、ガオンのプロテインが切れたっていうのは、おれが買ってやらなかったからっていうのか!」


「そうよ! マモル!」


「くそ……わかった。急いで、プロテインを買いに行こう!」


「だけど、試合はもう始まってる。弱体化したガオンでは、戻ってくる頃にはもう……」


「マモル!」


 ガオンが叫んだ。


 だが、それをさえぎって、レイナ先輩が叫んだ。


「ピースのサインは! 勝利のⅤ! ビクトリーレーザー!」


 ガ・ギーンオーの額から、Ⅴ字の赤い光線が放たれる。


 ビイイイイイイイイイイイイ!


 赤いビームが地面を抉り、ガオンに降りかかり、その肉体を焼いていく。


「うおおおおおおおおお!」


 それを必死で耐えるガオン。


「ガオン!」


「だ、大丈夫だ……マモル。私はお前さんが戻ってくるまで、絶対に倒れない……プロテインを持って戻ってきてくれることを、私は信じる!」


「ガオン……」


「早く! マモル! 購買部に行こう!」

「行け! マモル! 私は待っているぞ!」


「あ、ああ。分かった! 俺たちが戻ってくるまで、少しの間だけ頑張ってくれ!」


「おうとも!」


 アスカと一緒に闘技場を出て購買部へ向かう。


 最後に見たガオンの背中は、弱体化しながらも、どこか大きな背中に見えた。

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