VSゴーレ、スーパーロボいや、ゴーレム? スーパー?

 デンデンドドン! デンドドン!

 ガンガンギギン!

 ガンガンギギンガンギギン!

 ガンギギン ガンギギン ガンガンガンガン!

 世界は今 巨大な邪悪に包まれる

 急げ急げ 巨悪の炎が襲い掛かるぞ

 行け、行け行け ゴーサイン!

 俺の出番だウォーウォーウォー!

 ぶっ飛ばせ! 正義の鉄拳 ジェットパンチ!

 勝利の必殺 粉砕ヴィクトリーレーザー!

 オー オー 我らの

 ガ・ギーン・オー

 ガ・ギーンオー

 僕らの夢と希望の、スーパロボット!

 ガ・ギーン・オー ガ・ギーンオー

 〈ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!〉


 放課後第一試合会場。


 はて? アレはどこのアニメのスーパーロボットだろうか?


 頭をひねる。それにしてもでっかいなあ……。


 対戦相手はゴーレム。のはずだったような気がしないでもない。


「まさか、ここまでゴーレムが発展していたとは……」

 あれ? ガオンが珍しく弱気だ。戦慄している。

「しかしまあ、とんでもなく作り込んだゴーレムだ。完成度高いな」


 はたして、あのスーパーロボットと歌で名乗りきった、人型の巨大な物体は、ゴーレムなのだろうか? ゴーレムってもとっとこう、大小の岩がゴテゴテにくっ付いたような体系じゃないのか?


 俺には昭和世代のアニメのスーパーロボットにしか見えないのだが。


「作詞作曲、歌、全て私が、作りまーーーした」


 無表情で、目元で横ピースをしたキメポーズをするレイナ先輩。


 あれ? レイナ先輩ってこんなテンションの人なの? マジで?


 可憐な姿なのに、こんな熱血な古臭い歌を?


 なんかこう、何かのバランスおかしくね?


「この、スーパーゴーレム、ガ・ギーンオーが相手になる」


 スーパーロボットとゴーレムの間を取った!


「なんだよそれって! スーパーゴーレム? どー見てもなんだかよく分からんエネルギーで動いてそうな、スーパーロボットじゃないか! ちゃっかりトリコロールのカラーリングだし!」


 それになんで美人枠にイロモノ要素が入ってるんだ!


「恋は盲目とはよく言ったものよ」

「うるせえ!」

「まあ、あれだ。短い春だったな。マモル」

 ガオンが俺の背中を叩いた。

「…………」


 レイナ先輩が、手でピストルの形を作り、こちらに向けた。


「私のゴーレムで、あなたのハートを、げっちゅっちゅ」

「セリフが古い! しかも真顔!」

「じゃあ、君のハートをばっキュンキュン?」

「無表情でボケないでください!」

「むー」


 頬を膨らましてむくれているところが可愛い……じゃなくて、ひと時でも憧れた先輩の本性がこんなんだったとは。


「よし、やるぞ! ガオン!」

「うむ!」


 ガオンが妖精の状態からもとの姿に戻る。


 ガ・ギーンオーとガオンが試合場の真ん中に入り、お互いに距離を取って向かい合った。


 審判員の教師が両者の戦闘準備を見て。


「両者よろしいか? ……始め!」


「ウオオオオオオオオ!」


 ガ・ギーンオーが両腕を上げて吠えた。


 ガオンは珍しく、というかやっと構えを取った。


 ガオンがなにか妙だ? と思いつつ、半身になって構えるガオンを眺める。


 なんだ、ちゃんと戦闘スタイルを知っているんじゃないか。


 でもなんだか、妙に感じる不安は何だ?


「ガ・ギーンオー! ジェットパンチ!」


 なんか別名で言うとやばいから、ギリギリ路線で名づけたような技。


 その名の通りに、ガ・ギーンオーが腕を思いっきり突き出して、その拳が飛んできた。


 それをガオンが真っ向から受け止めようとする。

 だが――


「うおおおおおおおお――」


 両腕で巨大な拳を受け止めたガオンだったが。


 勢いを止められず、ガオンの大胸筋に巨大な拳がぶち当たった。


「ガオンがパワーで負けた!」


 筋肉に絶対の自信を誇るガオンが、ガ・ギーンオーのジェットパンチの直撃ででぶっ飛んだ。そんなばかな。


 飛ばした拳が、ガ・ギーンオーの元へ戻り、腕にくっ付いた。


 倒れたガオンがすぐさま立ち上がり、突進してくるガ・ギーンオーに身構えた。


 両者が手を組んで押し合いを始める。


 だが。


「ぐ、ぬぬぬぬぬう――」


 ガオンがどんどん押されていく。


「ウオオオオオオオオ!」


 組んでいた腕をガ・ギーンオーが上へと振り上げ、まるでガオンが子供のように持ち上げられた。


 ドォン!


 そのままガオンは地面に叩きつけられる。


「ぐ、ううう……」


 苦悶するガオン。


 やっぱり何か変だ。レイナ先輩のゴーレムがガオンのパワーを上回っているんじゃない。ガオンが弱体化しているのか?


「どうしたんだガオン! お前らしくないぞ」

「ふっ、ぬうん!」


 大股で地面にどっしりと腰を下ろして、立ち上がるガオン。


「お前のパワーはこんなもんじゃないはずだろ!」


 だが、黙ったまま背中を見せるガオン。


「何とか言えよ! 病気か? なにか分からないけど、お前、確実に弱体化してるだろ? 答えろよ!」


「…………」


「俺はお前のパートナーだろ! 隠し事なんてするなよ!」

「……実は」


 ガオンが重苦しく、呻くように言った」


「少し前から、切れていたんだ……プロテインを!」

「……は?」


「プロテインが切れてしまっていて、力がいつもより出ないのだ!」


「…………」


 これ、どー応えたらいいんだろう?


 プロテイン切れ?


 なんだそれ?

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