運命の出会い、になるわけが無い。と思っていました。

「ふあ……」


 と、いうわけで寝足りない。


 食堂で目玉焼き定食を食べた後で、そのままゆっくりとした足取りで校門へ向かう。


 なんでも定食にすればいいってワケじゃないんだけどなあ……。

 そんなことを思いつつ、整備された歩道をてくてくと歩いていると。


「うん?」


 十字路になった所で、右の方向で人影を見つけた。


 一瞬で、目を奪われた。


 ショートカットの白髪。だけどボーイッシュというわけでもない、むしろ――


 可憐な姿だった。


 手を後ろで組んで、もう緑が混じる桜の木を下から眺めている。


 制服の色が微妙に違うな、違う学年の生徒? なんで一年の敷地に? 確か学年別で分け隔てられてるはずだ。学年別での召喚試合を避けるために。


 背が少し高く、すらっとしているよりも細く、まるで軽く力を入れただけでも簡単に折れてしまいそうな……そう、花のような女性徒だった。


「マモル、どうした?」


 はっとなって目を覚ます。


「いや、なんでもない」


 日本の古い表現に『立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花』というが、まるでそれを体現したかのような女生徒だった。


 まあ、俺にとっては『高嶺の花』というやつだ。


「いくぞー」

「うむ」


 その女生徒から目を離したその時、一瞬、その女生徒がこちらを向いたような気がした――。


 てくてくと歩いていると、ガオンが急に離しかけてきた。


「さっきの女史は、どうやら二年生のようだったな」

「うん? ああ、そうだな」


「何故ここにおったのかな?」

「知らないよ。安息日だから、試合も禁止されてるし。前に暮らしていた学年の敷地に足を運んだだけじゃないか?」


「そうか。どこか妙な気がするんだが」

「気のせいだろ?」

「ううむ。そうかのう……」


「召喚獣も連れていなかったし、散歩だろ?」

「だから妙だと思ったのだが、やはりそうかな?」

「安息日だし。そんなもんだろ?」


「……そうか」


 実は言うと――


 あまりに美人で見とれてしまい。眺めていただけで胸がドキドキしてしまっていた。

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