異世界観光

爽やかになれない朝。


 そして、初日からのガオンの活躍のためか、俺に簡単に近づこうとするのはアスカにシャルティ、アラタぐらいしかいなかった。その半面、静かに過ごす事ができた。


 自分で言うのもなんだが、自堕落に授業を受けて、普通に食事をし、またさして興味の無い授業を受けて……俺がこの数日間で学んだことは。


 ガオンのマッスルポージングの名称だけだった。


 微妙に不服だ。

 そして休息日の朝。


 みんな筋肉で健康になろう! 準備はいいかなー? 


 チャンチャンチャラララ♪

 チャララララ♪

 チャラララチャンチャンチャン♪


 筋肉! 肉! 肉! 筋繊維! 

 筋肉! 肉! 肉! マッスルハッスル!

 

 体を伸ばして筋肉伸ばして!


 いち、に、さん、しー、ごー、ろく、しち、はち。


「ううん……うう……」


 体の反動を使わずに! 体を上下にスクワット!

 始め!


「ふんふんふんふんふんふんふんふんふんふん――」

 

 次は胸を張り、サイドチェストのポーズ!

 そしてーーーー笑顔!


「ふうん!」


 ポージングのまま八秒キープ!


 いち、に、さん、しー、ごー、ろく、しち、はち。


 腕を左右に振り回す運動! 


 いち、に、さん、しー、ごー、ろく、しち、はち。 


「ふんふんふんふんふんふんんふんふんふん――」


「うう、うううう……ううむ……」


 いいよいいよ! キレてる キレてる!

 

 君の筋肉は朝日とともにあるんだ!


 腰に手を当てて、股間を前後に動かす運動!

 

 前! 後ろ! 前! 後ろ! 

 

 君のお尻は岩石かい? イイネ! イイネ! チョーイイネ!


 その調子だ!


「だああああああ! うるせえええええ!」


 耐え切れなくなって俺は飛び起きた。


 そして古ぼけた再生機からノリの良い男の声が響いていた。


「おおう、おはようマモル。良い朝だな」

「何だそのラジオ体操みたいな変態トレーニングは! 外でやれ外で!」

「マモルもやらないか!」

「やらねーよ!」


「だが私の筋肉ではもう、目覚めておる! こんな天気の良い朝に体を動かさないでどうする? 筋肉に健康なる日々は当たり前だ!」

「ああ、くっそだりぃ……」

 額に手を当ててうなだれる。俺は小学校夏休みのラジオ体操ですら嫌いだったんだ。


 体の上半身をグルグルと伸ばすように振り回しながら言ってくるガオン。


「しらねえし! 今日は安息日だろうが! 二度寝もできねえよ!」

「ああ、ちょっと待ってくれ、体操が本番に入る頃だ!」

「…………」

 

 フロント・リラックスからのーー! サイド・トライセップス! 

 そしてーーーー笑顔! そのまま八秒キープ!


 ニッカリと笑顔を放つガオン。

 

 体は温まったかな? 君の筋肉は輝いてるよ!


「ふんふんふんふんふんふんふんふんふんふん――」

 ものすごい速さで体を上げ下げするガオン。

「…………」

 

 次は腹筋の運動! お腹に力を入れて……はい! シックスパック! 


「ふんぬうううううう――」


 ひょっとして、これ段階的にテンション上がっていくのかな? ……どうでもいいけど。


 ってか、まだ朝の六時十分とちょっと、静かな壁掛け時計さんおはようございます。


「寝るわ……」


 寝る。意地でも寝る


「では体操が終わったら私は走り込みをしてくる!」

「あー、そー……」


 集合は校門に十時に集合だったな。


 朝飯を食べても、あと二時間以上は寝られる。

 うん。俺は絶対に二度寝する。してやる。


 俺の爽やかな朝は二度ねから始まる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る