帰省(仮)(大学2年12月)

 ビルを買った時の不動産取得税の事をすっかり忘れていました。全額、今期の経費となるはずです。購入価格が8億。不動産評価額も、それなりとなり、その4%なので、デカい金額です。主人公の会社は初年度から赤字か? 矛盾点は、後日、直します。


俺     主人公

エリさん  自宅の家政婦さん。姉ポジ

マリちゃん エリさんの娘

ミア    家庭教師先の中1女子


***


【大学2年12月】


 年末に向けて、いろんな仕事納めがあって、俺は何かとバタバタしていた。まず、家庭教師は、早めに仕事納めだった。ミアが終業式の次の日に、お母さんとアメリカに帰省したためだ。お父さんは、仕事があるので日本に残っている。


 あのご家庭は、よくアメリカに帰省するが、航空運賃だけでも結構、かかるのではないかと、他所よそ様のことだが、ちょっと心配になった。お父さんは上場企業にお務めなので、それなりに稼いでいるのだろう。俺が心配することでもないか。


 俺の会社の決算は12月末だ。11月にネット証券口座ができたので、俺から短期で資金を会社に貸し出し、株式投資で四苦八苦しながら利益を出した。


 株式は、年末までに一度、現金化して、俺に短期借入金を返済した。決算時の借入金をあまり大きくしたくないと俺が思ったからだ。年始に改めて、短期(約11ヶ月)で貸し付ける予定だ。当然、無利子である。


 まだ、未確定だが、今年度は確実に黒字だろう。銀行から借り入れするつもりはないが、決算書が黒字というのは、とても重要だと俺は思っている。


 今期は、ビルを買ったので、不動産取得税(評価額×4%)がデカかった。株で稼がなければ、赤字だった。利益が出たので、エリさんに、少しだけだが、会社からの年末ボーナスを出した。アルバイトにボーナスを出してはいけないという決まりはない。


 会社は、少し早いが、クリスマス前に仕事納めとした。まるで、工場のようだが、実際、やることは、ほとんどない。お休みの案内だけ、入口のガラス戸に貼り出しておいた。正月飾りとか、鏡餅も用意しなかった。元々、神棚すらない。休み中は、管理会社が対応してくれる。


 父弁護士先生はじめ、お世話になったところには、会社からお歳暮を贈った。年賀状も来年度のカレンダーもエリさんが準備してくれた。必要なところには、メールで休業案内も送ってある。最後に大掃除をして、会社としての本年度の業務は終了した。会社というのは、いろいろ大変だなと、しみじみ思った。エリさんがいろいろアドバイスしてくれて、本当に助かった。


***


 クリスマスイブは、ナナコの所に行って、2人で過ごした。指輪はまだ早い気がしたので、若い女性に人気のイヤリングとネックレスを贈った。ナナコからは、雨の日でも大学に着ていけるように、防水、防風のパーカーをプレゼントされた。ご両親から、この日だけは宿泊の許可をいただいた。ただ、大学の講義があるので、翌朝一番に、帰らなくてはならず、あまり、ゆっくり出来なかった。


 エリさん、マリちゃんとは、クリスマスイブを過ごせなかったので、自宅のクリスマスツリーの前に、事前にマリちゃん用のクリスマスプレゼントを準備しておいた。


 マリちゃんのプレゼントには悩んだが、俺が絵本を読み聞かせすると、喜んでくれるので、持っていない絵本を5冊、買った。絵本は意外と高い。去年のミルク飲み人形は、1歳9カ月のマリちゃんには、大き過ぎたらしく、あまり使っていなかったが、最近、人形と一緒に遊ぶこともあるそうだ。


 12月25日は、エリさんの誕生日だ。今年は、エリさんのプレゼントチェック(昨年は腕時計)がなかったので、クリスマスプレゼントと合わせ技で申し訳なかったが、薄いピンクのコートをプレゼントした。それなりに喜んでくれた。エリさんからは、クリスマスプレゼントとして、栄養補助食品のセットを貰った。お歳暮じゃないよね?


 聞けば、俺の食生活が心配だから、お昼に食べてほしいとのことだった。


 昨年は、2日連続、丸いケーキを用意して、あの後、処理(食べるの)が大変だった反省を活かして。エリさんの誕生日は、いちごショートを3個買った。さすがに、29本もロウソクは・・・。


 クリスマスプレゼントで思い出したが、俺の父が小さかった頃、クリスマスプレゼントに直径20cmくらいの大きなメンコを望んだそうだ。祭りの時の屋台のくじ引きで、そういう特賞があったらしい。


 ネットが発達していなかった時代だから、祖父や祖母は、どこで買えるものか見当もつかなかったそうだ。そこで、祖母が、少年漫画のような雑誌を数冊買ってきて、厚紙を丸く切って、キャラクターのカラーページをのりでうまく貼りつけて、特製メンコを作ったそうだ。父は大喜びだったと、俺は祖母から聞いた。


 父は、そのメンコを宝物として、ずっと大事にしていたそうだ。数10年前の話だが、今でも祖父の家に、パズル用の額に入れて、ボロボロになったメンコが飾ってある。父の宝物だったので、父が家を出た後も、祖母が大事に保管していたようだ。


***


 大学は冬休みというものが、ほぼなく、年末近くまで講義がある。エリさんの家政婦としての仕事納めも28日までとして、29日に実家へ行くことにした。


 28日までに、個人の年賀状も出し終えた。去年の赤い門の前での写真年賀状は、なぜだかわからないが、親戚に好評だった。母から、今年は講堂前で、とのリクエストがあったが、ちょっとした反抗心から、かわいいキャラクターの年賀状にした。エリさんは、俺君の雰囲気に合っていないと笑っていた。


 今年は、1年間まるまる、エリさんが家政婦として働いてくれたので、去年は5万円だったが、それなりの金額で、家政婦としてのボーナスを出した。


「アルバイト先と、家政婦の両方でボーナスを貰えるなんて」


 エリさんは、ホクホク顔だった。付き合いが長いので、最近は、エリさんの感情がわかりやすくなった。


 実家行きを誘った時、エリさんは、一昨年も去年も、マリちゃんと2人きりだったので、2年間、おせち料理を食べていなかったと告白してくれた。だから、ウチの実家に行くことを、とても楽しみにしていた。


「お正月は、やっぱり、人数が多いほうがいいよね」


 詳しく聞いていないが、ご両親は、鬼籍に入っているのを俺は思い出した。


 12月29日中に、レンタカーで実家に帰った。大きな渋滞もなく、割とスムーズに帰れた。実家の玄関に入ると、補助輪付きの小さな自転車が鎮座ちんざしていた。自転車なのか三輪車なのかよくわからないが、親が持つT字バーが後部についていた。キャラクターの絵が付いているので、マリちゃんはとても喜んだ。まだ、早いような気がするが、大丈夫かな。


 妹が、早速、マリちゃんを連れて、庭で自転車に乗せていた。


 少し休んだ後、妹にマリちゃんを任せて、母とエリさんは車で買い物に行った。マリちゃんがママと離れてさびしがるかと心配したが、自転車遊びに夢中だった。


 俺は、父と一緒に、大掃除兼エリさんたちの寝床確保のため、家具の移動などを行った。この地方では、12月29日は「9(苦)」がつくので、この日に買ってはいけない正月用品があるそうだ。最近は、そんなことを気にする人も減っているが、母は気にしているので、買い物は、今夜の食材だろう。


***


 一夜明けて、30日の午前中、母と仲の良い近所の奥さんが訪ねてきて、エリさん、マリちゃんをお茶に誘っていた。マリちゃんと同年代のお孫さんがいるので、遊びに来ないかとの事だった。


 エリさんにとっては、知らない人だから、どうすればいいか、少し悩んでいたが、母がエリさんに何か言った後、エリさんとマリちゃんは近所の家に出かけて行った。


 エリさんが出かけた後、父と母が、俺と妹を話があると言って呼んだ。


「実は、家族4人で相談したいことがあったので、近所の人に頼んで、エリさんにはちょっと、席を外してもらった。それで、相談というのは、エリさんの事だ」


 父がそう切り出した。次に母が話し出した。


「これは、まだエリさんにも話していないんだけど、来年の4月にマリちゃんが幼稚園に入れる年になるの。それでね、エリさんさえよければ、ウチに住んでもらって、近くの幼稚園か保育所に入ったらどうかと、エリさんに提案しようと思ってるの。やっぱりね、女手1人での子育ては大変なのよ。そりゃあ、世の中には、1人で子供を育て上げているかたも、たくさんいらっしゃる。でもね、何かあった時に、頼れる人がいるといないのでは、違うと思うのよ」


 妹は、黙って聞いていたので、俺も口をはさまなかった。


「幸いなことに、ウチは妹ちゃんを県外の大学を卒業させて、望むなら、大学院、博士課程まで行かせてあげられる余裕があるのよ。だから、お母さん、働かなくてもいいくらいなの。エリさんが、働きたいなら、私がパートを辞めて、家にいて、マリちゃんの送り迎えしてもいいと思っている。もしかしたら、エリさんにとっては、厚意の押し付けになるかもしれないけど、この近辺は、子供を育てる環境がとてもいいと思うの。近所の定年退職した人達が、児童の見守り隊のボランティアとして、活発に活動しているし、地域も子供たちの教育に熱心な所なの。犯罪もとても少ないしね」


「俺も定年退職したら、ボランティアをやらないかと、よく誘われるよ」


「別に東京で暮らすことが悪いというつもりはないけど、あなた(俺)の所だと、何かあった時に不安なのよね。それから、私達に余裕があるから、エリさんを助けたいなんて、おこがましい事を言うつもりじゃないの。ご縁があって、エリさんと出会ったのだから、エリさんやマリちゃんが、ちょっとだけ暮らしやすいようになればいいなと願っているだけなの」


「ただな、これは俺と母さんだけで決めていい話じゃない。お前達、2人が賛成できないなら、この話は、初めからなかった事にしようと思う。それで、どう思う?」


 父が俺達の2人の意見を聞いた。


「私はエリさんが望むなら賛成だよ。マリちゃんも、もう、他人とは思えないし」


 妹が賛成意見を述べた。


「俺はある意味、この家を出た人間だから、エリさんが望むなら、いいと思う。ウチの家政婦だって、いろいろ事情があったから、やってもらっているけど、いないならいないで問題ないよ」


「そうか、2人とも賛成なんだな。わかった」


「本当は、エリさんとあなた(俺)が、そういう仲になってくれれば、話が早かったんだけど、さすがにちょっと、年が離れているからね。でも、エリさんから、いろいろ聞いているわよ」


 いろいろってなんだ。いろいろあり過ぎるから、それが分からない事には答えられない。俺は、黙秘権を行使した、


「まぁ、別にウチに住む必要もないんだ。エリさんが望むなら、近所にアパートを借りて住んでもらってもいい。何かあった時に、ウチがちょっと、サポートするだけでも違うからな」


 父はそう言った。


「とにかく、2人が賛成してくれたから、今夜にでも、一度、エリさんにいろいろ提案してみるね。大事なのは、エリさんの気持ちだから。無理強むりじいは絶対にしないし、恩着せがましいことも言わない。出来れば、マリちゃんが小学校を卒業するまで。無理なら、せめて2年。小学校に入るまでの2年だけでもいいの。サポートがあれば、絶対、違うから」


 俺は、両親の話を聞いて、やっぱり、俺と考え方が似ていると思った。間違いなく、俺達は親子だ。



***


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~チートを得たなら金と女が欲しいが治療能力は現代社会では使い物にならない~






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