なぜ彼らは小説を書くのか?

個人的に「こんなミステリを読みたかった!2022」(個人主催・選考)の大賞に選出したいくらいに満足感のある作品です。

ミステリとしても叙述と会話の掛け合いが巧みに使われていて、スリルと読み応えがあるのですが、何よりも創作をするすべての人への、叩きつけるようなメッセージが胸に迫ります。

主人公は若くして大成した天才女性小説家。書けば大ヒット、映像化もひっきりなしで人気も申し分がない。おそらく小説家としての頂点を極めたところで、しかし彼女の筆は数年前からぱたりと止まってしまう。

主人公は「小説を書く」という行為自体に倦んでいます。そして彼女が語る「物語を生み出すことの意義」が、諦念と怒りに満ちていて心の琴線に触れます。

創作をしている人なら必ず響くお話だと思います。そして、主人公が最後に選ぶ道を見届けてほしい。痺れるようなカタルシスを味わえると思います。

創作をする人にも、ミステリを愛する人にも、もちろんそのどちらでもない方にもおすすめしたい、世に出してほしい作品です。