05 坂本遥の過去

試合の合図と共に、お互い距離を取る鉄と龍二。


数分後、特殊な構えをした鉄と、

その前に倒れる龍二……決着は一瞬だった。



「しょ、勝者……マテツ!!

新たなチャンピオンの誕生だ!!!」



この瞬間、地下闘技場1位だったマテツは

チャンピオンになり、龍二はチャンピオンから

1位へと変動したのだった。


あまりにも早すぎる決着だった為、

地下闘技場は静寂に包まれている。


しかし、マテツが勝利したというアナウンスが流れると、

再び大歓声に包まれるのだった。


そんな中でマテツは力強い笑顔を見せて、

両腕を上げ観客達に手を振っている。


そしてその数秒後、マテツは倒れる龍二に

ゆっくりと近づき、手を差し出す。



「……楽しい試合でしたよ」


「……まさか、ここまで完膚なきまでに

負けるとは思わなかった」



鉄の言葉にそう言いながら渋々鉄の手を握り、

ゆっくりと龍二は立ち上がった。


その光景に観客達は再び歓声を上げる。


普段地下闘技場でこのような行動を取る選手はいない。


それ故に、マテツは地下闘技場での人気が高いのだ。



「……絶対に取り返す、チャンピオンをな」


「えぇ、いつでも相手になりますよ」



龍二の宣言にマテツはそう答えるのだった。


その後、鳴り止まぬ歓声の中、

マテツと龍二はリングを後にした。


そんな歓声の中に1人頬を赤らめる少女が居た。



「か、かっこいい……

あの圧倒的な強さ……あの落ち着いた仕草……」



マテツに恋焦がれる少女、

坂本遥は1人そう呟くのだった。

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