第7話 消えていく私

 異変が起きたのは1か月後だった。週末の約束のホテルに彼がすがたを見せなくなったのだ。連絡も途絶えていた。さびしいと感じた私はたしかにいたはずなのに、私はブラウスを脱いで裸になると、ベッドに坐って脚をひらいて、うっすら濡れる黒い茂みを男たちに見せつけていた。知らない男たちと幸福すぎるおぞましい行為に耽ると、私にとって彼はもうとくべつではなくなっていた。


 私を貫こうとする男なら私は喜んで迎え入れたから、集まった男たちで相談して、つぎに逢瀬するホテルをセッティングしてくれた。私は連絡されたとおりそこに行く。口コミで男たちがべつの男たちを誘い連れだってくる。そうやって、いっときは10人以上が集まった。


 毎回フラッシュの向こうで動画が撮られているのには気づいていた。私であるはずの女が羞恥の欠片もなく快楽に苦悶するおぞましいすがた。ネットの画面の向こう側でも、知らない男たちが欲望を熱く滾らせていると想像するだけで私は絶頂に襲われた。


 週末3日間だけでは足りなくなっていた。異常を通り越しているのは自覚していた。通信販売で男を模したモノとか買ってつぎの逢瀬まで凌ごうとした。でもなにかがちがった。男のかたちの模造品に「ホイミー」を使うことがなかったからかもしれない。


 警察がやってきたのはちょうどその頃だった。彼に関して調べているようだった。どうかしたのかと聞くと、彼が亡くなったと告げられた。女性に暴行をはたらいたあと自殺したらしい。私が彼と付き合っていることを探り、私のもとにも訪れたのだろう。


 付き合っているけど1週間以上連絡がとれなくなっていたと私は説明した。連絡がとれなくなっていたから心配していたけど、まさかそんなことになっているだなんてと、私は四角四面な感想をもっともらしく述べていた。彼が亡くなったことよりも、人間的な感情が消えたようなじぶんに私は驚いた。

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ホイミー あきまり @akj

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