45 初老の老人の回想、雅楽さんとマクベスの密約。
「バカな話だ。」
初老の老人は鼻で笑った。
「また、アニメや、漫画、ゲームの話か・・・。
最近の若いのは、訳の分からんゲームやらアニメ、漫画の世界に犯され、洗脳されている。バカみたいな話だ。
男は蔑むような眼で見下した。
安っぽい絵だ、音楽だ。
到底、高尚な芸術には及びはしない、只の餓鬼の遊びだ。
そんなものに御金を払って売れた売れたで、流行を気取るとは、此の世界も随分腐ったものだ。
老人は両手を腰の後ろで組んで、玄関の草木を見つめながら言った。
「バカで、おかしな奴らが増えた。」
此の国も潮時かも知れん・・・。
テレビでは馬鹿なテレビ番組が何時しか報道されるようになっていた。
とても残念な世の中になったものだ・・・。
儂らの時代も終わったのだな・・・。
あの頃のあの黄金の時代は何処へ・・・。
過ぎ去った若き青春の時代を思い返す。
世界は、私達の躍進に驚き、私達は世界の中で大きな活躍をした。
あの頃・・・。
今や衰退の一途をたどっている、平和の幻想の中で。
水面下では、既に滅びの兆候が見られる。
誰もが安全、安心を信じて居る中で着々と其の安全安心を脅かし、栄光と、栄華を滅ぼさんとする勢力が力を付けて、世界平和を乗っ取ろうとしている。
そして、世界では馬鹿が増え続ける。
「残念だ。」
私には、何も出来なかった。
只見て居るだけで、国が衰退し、滅びゆくさまを眺めて居る事しか出来なかった。
世界中の企業や、国の企業でさえ、彼等の味方をした。世界は彼等に征服された。
さらに馬鹿な奴らは其れに賛成した。国を捨てて、あの場所に移住した。
裏切り者が増えた。
自分の生まれ育った国よりずっと待遇が良かったのだ。
そして知らない間に此の国を最後まで見捨てず残ったのは我々の様な老人とごくわずかの若い連中のみだった。
空っぽの国には何もない、孰れ奴らに実行支配される日も近いだろう。
私は知っていた。
こうなる事を。
だから政治家になって国を変えようとした、しかし、組織の強固な姿勢と、上層部による圧力により、精神をやられた、更に、洗脳されそうになった。
此れが国の政治なのか・・・。
と絶望した。
それ以来私は、密かに暮して来た。
しかし、まさか、この様な事に成るなんて、当時からなんとなくこの国の平和がまやかしで或るとは気が付いていたが・・・。国の残ったのはごく僅かの、元の人口の十分の一にも満たなかった。
「優秀な奴は、あの国に寝返ったさ。」
佐助は、そう言って泣いていた。
「あの頃は楽しかったよなー。未だ奴らの手が一般市民に届いて無かった頃の話さ。」
一般市民でさえ、あの国へ行ってしまった。
外交を間違えたか、何も間違えてなどいなかった。
かつての世界大国 メリスでさえ、簡単にあの国 悪魔の国 ジャイアに 制圧され、今では奴らの下になった。
「メリス国や、その他の先進国家でさえ、ジャイアに制圧され、其の配下に下る事を決定した。奴らに屈していないのは、このワジャの国と、イム国、メリスの残党位のものさ。」
メリスの残党 メリダは言った。
気が付けば、ジャイア国は、既に世界全体に市場を作っていた、そして、自分たちの配下に下った者だけが優遇される制度を創った、誰もがジャイアの恩恵を得られる事を望み、国を裏切り亡命するものが増えた、そして世界中の国が崩壊し、ジャイアは戦わずして、世界を手に入れた。
今や、かつてのメリスの国がジャイアの様に、なって、ジャイアの国は世界の覇王いわば、盟主になっていた。
あらゆる国がこのジャイアに挨拶し、ジャイアに感謝した。
しかし、我々はジャイアに屈しなかった。独立を守った。ジャイアの世話にはならなかった。
誰もがジャイアをヒーロとする中未だに、メリスの力を信じ、かつての先進国家の文化、文明を愛した少数の集団によって創られた組織、カルチェア 。
地球は確か、あの後カルチェアによって再統一されて、更に世界中が互いを認め合うようになったんだったな・・・。
雅楽は言った。
「世界史の教科書でしか見た事のない、記述です。」
画レ虚は言った。
「僕は三百年以上前に此の反転世界に来たのだからねええ。あの大戦というか、文化闘争、知恵を使った争いがあって、其のカルチェアの一人が僕だったのだけれど、そう、あれで世界はより人種の違い文化の違いを尊重できるようになった。」
ベムが死んで終ったのは残念でならないと、雅楽は残念がった。
「地球人は僕とベムの奴と君それから・・・。未だ十人程僕は知っているが・・・。にしても残念さ。」
といった。
反転世界で、会議が行われた。バーバリアン、レイモンデ、雅楽、そしてスカイから、画レ虚、バルマ、カローナ、菓子太郎、シヱ。マリーが出席した。
佐助という、地球時代からの雅楽の友人だという忍びが、言った。
「どうやらやはり・・・。マクベスは生存しているようです。」
この世界の秘密。神代の神々について此のもの達は未だ知らない。
「西の地の支配を君たちに任せる事に関する会議なわけだが・・・・。君たちの事はよく知っているよ。此れから、どうして行くつもりかな。マクベスはいい奴だったし、その一人を倒したとなると、反転世界の奴らは納得しないだろう。」
役立たずの雅楽さんには、迷惑している。
あの野郎も、マクベスの奴も、こんなレベルの低い餓鬼どもを、四大勢力の一つにして、西の支配を任せるなど、正気の沙汰とは思えない。
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