35 マクベスの右腕マーリル

 此の死闘のあった頃、画レ虚、バルマ、菓子太郎は、花の咲く庭園に居た。


 綺麗で、いい匂いの花々の咲く、フラワーガーデン。


 「マクベス城にこんなところがあるなんてな・・・。」

 バルマは言った。


 「そうだね。」

 不思議だ。とても繊細で美しい花々、とても、いい景色。そして何処か懐かしい。


 「マクベスは何処にいるんだろうな。」

 バルマはあたりを見渡した。


 「さあ、ね。隈なく城全体を探すしかないんじゃないの?。」

 菓子太郎は、途方もない事だと嘆息をして言った。


 「やあ。君たち。此のフラワーガーデンに何の用かな。」

 酒を片手に、編み笠を被った、何処か風流な、男だった。


 「綺麗な花だろう。ちょっと見てくといいよ。」


 「貴方は一体・・・。」


 「僕かい?僕はマーリルちょっとした朴念仁だよ。ふはは」


 マーリルはしばらく黙りこくると、語りだした。


 「私たちが今見て居る世界は本当の世界だろうか。


 もしかすると其れは、一つの見え方に過ぎないのかも知れない、例えば僕がいま寝て居るこのソファだって、別の視点から見れば全く別の巨大な猫の妖怪や、蛇、未知の生き物其れは白くてふわふわしたものかも知れない。


 ただ、其れ等が人間の持つ認識ではそう見えて居るだけで、そう感じているだけで。

 剽軽者の変わり者のいかれた物理学者は言った。


 この世界は多重に、存在していると。


 ニュートリノは見て居るのだといった。


 おかしな学者だと思った。


 ぼさぼさの天然パーマが火山の噴火の様に爆発した髪型であった。


 しかし、その物理学者の言っていた事が本当の事だと知ったのは、私が、見えない物を視える様になってからだった。


 頭の中に住んでいた松ぼっくりが目覚めて僕を訳の分からない認識の世界連れていったのが始まりだった。


 青白い焔が燃えている。


 一般的な感覚の認識の人間には居る事も鑑賞する事も、勿論干渉することさえ出来ないものだ、けれど確かに其処にあるのだ。


 普通に、生活しているのだ。其れ等は、此の世界と全く同じ場所に位置している。そして重なっているが、全く別の概念だ。


けれど、あるのだ。」

 

 

 「きちがい染みた話だろ?」


 男は笑って酒を飲んだ。


 とても、気さくな陽気な男だった。


 三人は男の話を聞いていた。


 男がとある国で発狂して、森へ逃げ出した事、突然其れは街を襲って、人が死ぬことなんて考えられないくらい平和な星で、突然起こった事。


 一万人もの人が急に発狂して、森へ駆け出して行方不明になるという奇怪な奇々怪々な現象が起こった事。


 当時はバカにしていたが突然自分が、それらの症状に掛かって、自分の意志とは裏腹に叫び出し森へ駆け出した事。訳の分からない、多重世界の映像に頭をやられた事を語った。


 「此れは、きちがいのいう事さ。別に信じて貰わなくったって構わない。只誰かに話して聞て貰ってねえとおかしくなっちまいそうなのさ。アレが、二百年前の事さ。俺が此の反転世界の存在を知る前の話。反転世界にさえそんなバカみたいな話を信じる奴も、そんな事が起こる事さえ何処にも書かれても語り継がれてもいねえんだ。」


 マーリルは言った。


 「おかしなもんさ、マクベスなんて男に、スカウトされて摩訶不思議学校の一番の柱になったが、特に何にもしてねえ、俺は気儘に、酒でも飲んで、のんびり日々を過ごせられれば其れでいいのさ。」


 だが・・・。


 と言って男は止まった。


 あの、奇々怪々な、化け物染みた現象には、度肝を抜かしたぜ、何て立って、自分の意志とは別の何か奇怪な精神か、精霊か分からねえこの世のものじゃねえ概念が感覚が確かに立ったんだからよ。


 「俺は今、其の事を調べてるのさ。」


 「面白い話ですね。」


 画レ虚は目を輝かせながら言った。


 「そうだろ。分かるかこの話の面白さが。」


 バルマは、呆れた様子で、いかれたおっさんだと相手にしなかった。菓子太郎は、案外興味深そうに話を聞いていた。


 「あんたら、マクベスに用があるんだろ。俺はあんたらを殺す様に言われているが、面倒だから、いいや。」


 此の男はダイジョブなのだろうか・・・。


 「なあに、マクベスは気のいい奴さ。俺のしたいようにしても何も言ってこない。寧ろ其れを尊重してくれるのさ。」


 ただ・・・。と言ってマーリルは口ごもった。


 「お前等は殺されるかもな・・・。お前等何だか訳アリらしいからなあ。まあ、詳しい事は訊かされていないがなあ。まあ、精精生き延びろよ。」

 

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