第二十八話 表の顔

 僕は今日、ある所へ向かっていた。


「なぁ~、まもるぅ~。一体どこに行くんだぁ?」

「ん~、【広報部こうほうぶ】だって」

?プロレスでもすんのか?」

「そっちのじゃないよ…」


 ペガメントはこんな調子だけど、別に嫌いではない。むしろ、こういうやりとりができるのって楽しい。


 それはそれとして、広報部…、正しくは【広報戦闘部隊こうほうせんとうぶたい】へ向かう。『広報』というだけあって、D.M.Sにおける広報活動のほぼすべてを担当している…、実際はD.M.Sの活動資金を集めるためにアイドルプロデュースなんかをやっているみたいだ。僕は、テレビとかあんまり観ないからわからないけど、結構有名なアイドルが居るらしい。なんで、そんなことする必要があるんだろうと思ったけど、そのアイドルがD.M.Sのになって、目立つことによって、スポンサーから出資される…とかなんとか。僕には、よくわからないや。


「ほら、着いたみたいだよ」

「おお~、ここが。リングはえな」

「だから、違うって」


 今日は、以前から導入されていた【バディ制度】を本格的に動かすということで、それの宣伝のために呼ばれた。何をするかはわからないけれど、多分インタビューかなんかじゃない?


「それで…、どこへ行けばいいんだ?」

「あ…、その辺聞くの忘れたな…」

「おいおい…」

「まあ、話は通ってるだろうし何とかなるよ」


 そんなことを話していると、誰かから声を掛けられる。


「お!君たちが新しいバディ?待ってたよ」

「……?あの…、」

「あれ…?僕のこと知らないかな?」

「はい」


 声をかけてきたのは、明るい雰囲気ふんいきの青年だ。頭の上に『?』が浮かんでいるような表情をしているけれど、誰だろう?


「『ボクがすべてのハートを射抜く!』…ってこういうの知らない?今、僕が出演してるドラマなんだけど」

「いえ…、テレビとか観ないので」

「そっか…」


 彼は、すごく落ち込んでいるみたいだ。嘘でも、知ってるって言ったほうが良かったかな?


 そんなことを考えていると、ペガメントが声を出す。


「お、お~!オレさまコイツ知ってる。テレビで観たことあるぞ。確か名前が…【】!」

「ち、違うよ…。ていうか、それ誰なの」


 ペガメントは自信満々に答えたが、全然違うようだ。


「はぁ…、僕もまだまだ頑張らないといけないってことかな…」

「あの…、それで…」

「ん…?ああ、そうだったね。僕は【麻田あさだ 太陽たいよう】。一応、D.M.Sやらせてもらってるよ」


 ——顔…?じゃあこの人が…。


「そんなすごい人が、どうして僕らのところへ?」

「いやぁ、さっき機動きどうさんから連絡があってね。『詳しいこと教えるの忘れたから迎えに行ってちょーだい!』って」

「あ、なんかすみません…」

「別にいいよ」


 本当にあの人、こういうところあるからなぁ…。まったく…、もう少しシャキッとしてほしいな。


 いつまでも、こうしているわけにもいかないので、僕は本題に入る。


「そういえば、ここに来いって言われたんですけど、何をするんです?」

「ああ、そのことね。少しは聞いてると思うけど、【バディ制度】についての宣伝をするっていうんで、その撮影をちょっとね」


 結局何をするかはわからないな…。


「立ち話もなんだし、早速行こうか」

「え…?」

「…?ああ、僕もその


 アイドルってそういうこともするんだぁ。


 いや、おかしいだろ。





 あの後、一日中いろいろ取材だとか、撮影だとかで時間が潰れてしまった。ペガメントは、最初こそ乗り気だったが、2時間もする頃には飽きたようで、しきりに帰りたがっていた。正直、僕も帰りたかったけど。


 他のバディ達も来ているようで、待ち時間にいろんな人と話をした。亜人にもいろいろなタイプが居るようで、生物的な姿をしていたり、機械的な姿をしていたり。中には、そのどちらにも当てはまらなさそうな亜人も居た。亜人も、そのバディとなる人たちもって感じだったなあ。


 そういえば、麻田あさださんのバディの亜人はどこにも居なかったな…。もしかして、すごい凶暴だから閉じ込めてあるとか⁇…、なんて考えてみたり。


 そんな風にぼんやりしていると、麻田さんが声をかけてきた。


まもる君、機動きどうさんから預かっているものがあるんだ」

「なんです?もしかして、ペガメントの体の一部とかですか?昨日から、アレが無いってうるさくて」

「あはは、違うよ。ほら」


 そう言い、麻田あさださんは一つのアタッシュケースを差し出す。その中身は、腕輪うでわ状のものが二つ。


「【バトルブレス】さ。バディを組んだ人にはもれなく配られるものだよ」

「どういうものなんです?」

「簡単に言うと、亜人の力を人間の力にできるんだよ」

「ますますわからない…」


 ——困ったなぁ。この人も説明不足なタイプなのかなあ?


「ま、使ってみればわかるよ。それに、僕は説明が苦手なんだ」


 ふうん…。ま、こういうのは慣れって言うからね。


 どんな使い方をするのか想像していると、館内放送がかかる。


『亜人災害発生!出動できる隊員は現場へ急行してください!』


 物騒だなあ。僕が気づいてなかっただけで、意外とこういう事件ってよく起こってるのかなあ?


「おーい!だれか行けるか~?」

「いや、俺は無理だ」

「私も、ブレスの調子が…」

「こっちは、亜人の調子が悪い」


 広報関係で集まっていた隊員たちが、なにやら話始める。どうやら、誰が行くかで揉めてるようだ。


まもる君!ちょうどいいや!の使い方を教えてあげるよ。僕も、珍しく、このあとフリーだからね」

「あ…!はい!ほら、ペガメント行くよ」

「んん…、もう朝か?」

「何寝ぼけてんの!早くして!」

「あっはは!なかなかの名コンビじゃないか!」


 ペガメントはこんな調子だけど、いきなりチャンスが来た!ブレスの使い方もわかるし、他の隊員の戦い方も見れる!


 D.M.Sの顔のお手並み拝見はいけんと行こうか。

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