第4話
「ゆにさす?」
思わず口に出したアタシに顔を上げたカレは照れ臭そうに話す。
「この子の名前。角があるけど、ほらここ。羽が生えてるんだ。ユニコーンとペガサスの名前を足してユニサス」
あー、頭とお尻をくっつけたのか。
まあ、確かに逆のパターンで付けるとおかしいよな。
(ペガコー…)
想像しただけでアタシは吹き出しそうになる。
「別なのも考えたんだけど、ペガコーンはちょっと間抜けかなって」
「ん、ぐっ」
口元を押さえてアタシは必死に笑いを堪える。変なツボに入ったから大声で笑い出しそうだ。それはまずい。
「ペって抜けた音の後にガって強い音が来て、またコーンて抜ける感じがね」
「や、やめ…」
「ユニサスの方がペガコーンよりもいいなって」
「ぶぁっはっはっはっはっ!」
我慢の限界を超えた息を吐き出し、そのままの勢いで笑い出してしまう。
映画なんかだったら、アタシの笑い声を背景に誰もいない廊下に、空き教室に、屋上に、青空にカットが切り替わっているシーンになるに違いない。
「……そこまでおかしい? ペガコーンって」
こいつ天然かっ!
アタシは笑いを止められなくて右手で崩壊しそうな腹筋を、左手で机を支えにゲラゲラ笑う。
「君ってそんなふうに大きな声でも笑うんだね。いつも口元を隠しながら話すから、なんかちょっと新鮮」
「それは……」
「あ」
カレとアタシの声が重なる。
アタシは口元を隠し、カレはアタシの隠した口……の中を見つめている。
「それって、舌ピアス?」
やっべぇ、見られた。
カレが言う口元を隠しているのは当然お淑やかだからなんて理由じゃない。
中学入学前にセンタータンにピアスを付けて、それを隠すために口元に手を当てて話しているだけ。
答えを待っている様子のカレに肯定も否定もせず、無視を選択したアタシは背を向けてパソコンが置いてある机に戻る。
カレが何か話したそうにしていてもガン無視。
やがて諦めたカレは練習に戻って行った。
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