time 12

ショウ、大丈夫か?」

軽くゆすると、ショウはなんとか頷いたがすぐに寝入ってしまった。

「無理させてもうたかな」

ショウの精液が付いた手は握りしめて、もう片方で頭を撫でた。

ベッドを出てゴムを始末して手を洗った。

タオルを濡らして電子レンジで温めた後、それでショウの下腹部を軽く拭いてやった。


ドッと眠気が襲ってきた。

久音は大欠伸をするとベッドに横たわり、ショウを抱きしめながら眠りについた。



なんだろう。

この音。

遠くで聞こえる振動。

ぼんやりと意識が浮上してくる。

『電話』バイブだ。


目を開けた。

カバンに入れっぱだ。

面倒なので出ないでおこうかと思ったが、いつまでも振動が止まないので仕方なく鞄の方へ行く。


スマホを取り出して画面を見てびっくりした。


「ショウ」からだ。

振り向いてベッドを見た。

ショウはまだ眠っている。


誰だ?


思い切って出てみた。


「もしもしぃ」

男の声だ。

「久音君?」

思わず唾を飲み込んだ。

「そうやけど、あんたは?」

轟雅詣とどろきがもう

「なんでアンタが古川のスマホ持っとんねん?」

向こうでフフッと笑い声がした。

「今、祥一郎君と一緒にいるぅ?」

「いるけど?」

「代わってぇ」

「まだ寝てる」ぶっきらぼうに言った。

「祥一郎君、僕ん家にスマホ忘れて行ってさぁ。電話帳で君の名前合ったから電話してみてん。当たりやねぇ」

「ロックは?」

「誕生日やったらぁ、いけてん」

ちっ、と思わず舌打ちした。こっちは知らないのに!


「取りに行けばいいんか?」

轟は少し躊躇った後言った。

「あー僕さぁ。今から稽古行かなならんのよぉ。〇〇ってとこぉ。あ、僕芝居しててさぁ。できたらそこに取りに来て欲しいんやけどぉ。祥一郎君に劇の原作頼んだからさぁ、演出も見て欲しいんよぉ」

語尾が間延びする甘えた喋り方に余計イライラした。

「わかった。取りに行かせる、じゃあな」

すぐに通話を終了した。

そして確信した。


こいつが監禁男(未遂)でドラッグ盛った奴だ。

ショウを一人では行かせられない。

稽古場は一人では無いだろうが牽制する必要がある。


今日は昼から授業だ。その前に寄ったらいい。

まだ寝ているショウを起こしたくは無いが、仕方がない。


敵地に乗り込む気分で、身支度を整え、ショウを起こした。

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