第6話 【アクドーside】あいつはこんなに大量の仕事をこなしていたのか?




ーーその頃、一方。


王城では、一人、あまりの忙しさに悲鳴を上げているものがいた。


アクドー・ヒギンス。


王の側近だったディルック・ラベロを罠にかけ、偽の罪を着せて、城から追い出した張本人である。



その後、彼はディルックが去ったことにより空いていた側近の座に収まっていた。

公爵である親のコネを、全力で利用したのである。


ここまでは、まさしく計画どおりだった。だがしかし、今の状況はどうだ。


「……ありえない。ディルックのカスは、こんな仕事量をこなしていたと言うのか!?」



朝から夜まで、アクドーは忙殺されていた。


仕事が山のように降ってくるのだ。

王との政務相談や、各種打ち合わせ、大量の調べものに、宴会のような付き合いまで。



側近の仕事は幅広く、そして専門的な知識も求められる。


それをディルックは、一手にこなしていたのだ。

それも、平然とした顔でにこにこと。



なんの努力もせず親の栄光に縋って生きてきたアクドー一人で、同じレベルの仕事をできるわけがなかった。



疲労困憊した彼は、やがて都合のいい考えに至る。


(ディルックの奴は、きっと適当に処理してサボっていたに違いない! でなければ、こんな仕事量どうしようもない……!)



もちろん、その決めつけは誤っていた。


ディルックは培ってきた確かな知識や判断力で持って、膨大な仕事量でも真摯にこなしてきたのだ。


しかし、そうと信じたくないアクドーは、


「む、むぅ……今日はここまでにしておこう」


ほとんど手をつけられなかった書類仕事を放り投げて、執務室を後にする。


後ろから追ってきたのは、直属の部下たちだ。


専門的知識がいることもあり、すぐに補充できる人員ではない。

ディルックの時と同じものが留任していた。


「アクドーさま、お待ちください! まだ、こちらの書類が……」

「お前らがやっておけばよいだろう、そんなもの! 僕はもうなにもしたくない」

「し、しかし! ディルックさまは全てに目を通していたのですが」


失言したとばかり部下は口元を抑えるがすでに遅い。

憎き名前に、アクドーは憤りを露わにする。


「僕の前で、そいつの名前を出すな! 次そのカスの名を言ったら首が飛ぶと思え!!

 誰に口を聞いていると思っているんだ、全く。僕はヒギンス家の人間で、王の側近だぞ……?」


怒鳴りつけることで、完全に萎縮させてしまった。

アクドーはその様子を、ふんと鼻で笑って、身を翻し再び城を出て行こうとする。



残された部下たちは、


「あぁディルック様だったら、こんなことはありえなかった……。なんだ、あの横暴な態度は」

「くそ、なぜあんな人が昇格して、ディルック様が辺境の領主にさせられてしまうんだ……」

「俺はディルック様の元だから、働きたいと思えていたのに。俺、もうやめようかな」


こう、去ってしまった元上司であるディルックへと思いを馳せるのだった。


ディルックとアクドーでは、明白に人望の差があった。



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