大人げない大人たち(12月17日分)

雪の多いこのカルン国では、冬になると誰も彼も家にこもるそうだ。

冬越しのため秋は商人が増えるらしいが、今はもう仕事の口が無い。

すると宿の主人、ギィが、宿代やどだいを下げるから春までいればいいと言ってくれた。

そんなわけで当分はとどまる事にした。


と言ってもじっとしていてはひまだ。

星誕祭も終わったし、する事も無く歩いていたら、3人のガキに雪を投げられた。


「お前があっちこっちで手伝いしたから、オレたちおだちんもらえなかったんだぞ!」

と言いがかりをつけられた。

面倒なので大きな雪玉を作って投げると、負けじと投げ返して来た。

そうして雪の投げ合いが始まった。


投げ合っているうちに、ガキどもは雪で壁を作り始めた。

俺も真似まねして壁を作ると、騒ぎに気付いた街の人間たちが集まって来た。

これはさすがに苦情を言われると思ったら、1人の男が俺の隣に立った。

ガキどもの方には、女が1人加わった。


そして1人、また1人と、大人たちが加わって来た。

家に籠っていて鬱憤うっぷんでも溜まっていたらしい。

しまいには壁を作る奴と投げる奴に分かれて、街中まちじゅうの大人たちが雪を投げ合っていた。


日が暮れてようやくお開きになり、宿に戻るとギィが迎えてくれた。

「お帰り。今日は何して遊んできたんだい?」

とにこにこしながら、彼は全身にかぶっていた雪を払ってくれた。

まるで親のようなその口ぶりに、俺は恥ずかしいような嬉しいような、妙な気分になった。

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