第9話 悶えと喜びの各々

(お肌キレイだって!キャー嬉しい!)


顔が綻んでいる。ボクの顔が火照っている。


(んんん〜ん〜!!!!)


玄関前で悶えてしまうボク。


「よかったー、景一にこんな顔みられなくて。安堵、安堵。」


ボクはそんな自分の顔を元に戻し、ドアノブをひねる。


「ただいま〜。」


「おう、おかえりーー。」


兄ちゃんが返事を返してくれた。

多分リビングでゴロゴロしているようだ。


「おうよ、伊織。学校よかったか?」


「ふふん、兄者よ。実はボク…」


「お…??」


「友達できたんだぜ✨」


「…まぁ目ぇ覚ませって。」


「いやいや、本当だからね!?ボクは兄者とは一味違うんだよねぇ。ふふん。」


兄ちゃんにドヤ顔をキめる。

腕をくみ、仁王立ちで、ソファに寝転んでいる兄ちゃんを見下してみる。


「まぁでもちょっと…。」


「?どうしたんだよ。」


「実はボクが女の子ってこと黙ってるんだよね!!」


「は…??どういうことだ笑笑」


「いやあの実は友達というのは男の子なんだけど、ボクが男の子って勘違いしてて…」


「あ!え!て!だまってるんだよね!」


「へ、へぇ〜そうなんだ〜。てかなんで隠す必要があるんだよ笑笑」


「いや〜ボクちょっと…一目惚れしちゃってね…。」


(んんん〜〜ーー!兄ちゃんにも言っちゃった!)


「そいつにか!?いや、悪い男じゃなかったらいいんだが。大丈夫か?俺が見極めてやろうか?」


「こんなクソ堕落兄ちゃんに査定される景一がかわいそうだよ。デリカシーないやつめ。」


「おい我が妹よ!そんなに俺のことを貶すなよ悲しくなってくるじゃねぇか!」


「兄ちゃん、事実を言ったまでだ。」


「ァァァァァァ、ってその男、景一っていうんだな。俺の名前、景助の景の漢字一緒か?」


「あー…うん一緒だね。」


「ほぉ!これは親近感が湧くな!俺そいつのところいってく」


「いかんでよろしい。」


こんな変な兄ちゃん見せられないよ景一に。

とりあえずこれからは頑張って兄ちゃんに現れさせないようにしようと誓った。


_______________


「たっだいっっまぁーーーーー!!!」


「おー!にいにおかえり〜!」


「あれ?亮太は?」


「あ、アイツやったら、友達と遊びに行ったよー。」


出迎えてくれたのは、妹の絵実である。

さぁ俺の自慢話を語ってやろうじゃねぇか。


「はっや。まぁええや。さぁさぁ俺の学校生活聞きたいか?興味あるやろそうやろ!」


「あー強いて言うなら、周りの人たちに気色がられたかどうかってとこが気になるね。」


「おいお前は俺のことどんなやつっておもってるんや…。」


「ノーフレンドノー彼女。」


「おいしばくぞコラ。オホン、まぁ聞いてくれ。」


「ずばり、友達ができた。」


「っっーーー!!なんやて!?にいにに友達…が…!グハッ。」


「そうじゃき!吾輩に友達ができたぜよ!」


「いやいや、そういう妄想いいから。」


「なんなら俺、そいつの弁当つまんだ。」


「!?!?!?にいに…やるな…。」


「せやろせやろ我が妹よ。ってのはほんまなんやけど、もう俺友達できたんやぜ。」


「まぁ真偽は定かではないけど、まぁそういうことにしといたろう。」


「え、なんでそんな上から目線なん。」


「お前逆にどないやねんよ、ってお前まだ厨二病拗らせてる時期か、ハッハッハ。」


「うっせぇ、カス。絵実にだって友達おるもんな!にいにと違ってよ!」


「怖い怖い、怒らせたらあかんわこれ。」


やはり思春期の女の子は怖い。


さてさて、いい感じに妹を不機嫌にさせたところで、


「まぁまぁあとでアイス買ったるから、ありがとう俺の自慢話聞いてくれて笑笑。」


「まぁ…いいってことよ、にい。」


自慢話もさておき、その後俺は自分の部屋で大声で喜んだ。


「っしゃーーーー!!!孤独を味わわなくて済むぜぇぇぇ!!!!!フゥーーー」


「うるせぇ!!!!にい!!!!」


「ごめんなさい。」


妹からの叱責を受けたところで俺はあることに気がつく。


「あれ…そういえば伊織のメールも電話番号も…知らねぇ…。」


かなり重要なことを見落としていた。これがないとなにも始まらないじゃないか!


明日いろいろきこうと決意した。




一方その頃_________


「ァァァァァァァ!そういえば景一のアドレス知らないぃぃぃぃ!完全に忘れてた!」


伊織宅でも同じようなことが起こっていた。


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