ー 揺れるアールタラ(2) ー
「お嬢様、もう少し腕を上に」
「え、ああ、ごめんなさい」
あの後、結局夢を見ることもなくスッキリと目覚めた私は、朝食もそこそこにさっそく準備を開始していた。
任務の関係で通常軍服で
ヘルモーズ隊の軍服は、血染めの謂われを持つ
上は、純白のシャツに同色のアスコット・タイを結び、家紋をあしらったリングを通す。
左胸とペリースに国章、両腕上腕に部隊章、肩章と袖章で階級を示し、刺繍はすべて銀糸であしらわれている。
下は、伸縮性のある生地で仕立てた漆黒のジャストサイズのパンツに、側面に
これらの礼服は、
「お嬢様。着付けはもう最後でございますから、今しばらくご辛抱を」
「…はい」
着付けの最後、徽章を左胸の国章の真下に並べて付ける。
魔王軍は、生来の
私が賜っている徽章は、
『徽章を与えられた者は、命ある限りその任を全うせよ』
これこそが、魔王の存在が絶対であり、徹底的な実力主義社会である
私の所属するヘルモーズ隊は、魔王軍の中で最も規模が大きい前線部隊だ。平時は、街の巡回や他国からの要請に基づく
ヘルモーズ隊は、お義母様のお祖父様、つまり私の曾祖父であるグラディウス・ヴェストリ
本来、エインヘリヤル徽章など
(それに…、四家に連なる生まれだというのに竜とも契約できていないし…)
リントヴルム竜騎士隊は、
将軍級が所属していることも多いため、各隊には代行して指揮が取れる副官が数名配置されており、それが
(私もいつか、リントヴルム徽章を付けられる日がくるのかしら…)
「さぁ、お嬢様。お次は御髪でございますよ」
「はい…」
もう肩が凝りそうだ…と嘆くとの同時に、お父様が不在で良かったと心の底から感謝する。お父様が私を着飾るとなれば、決まりきった礼服でもアレやコレやと3時間は捕まってしまうのだもの。それに比べれば、侍女の手早く正確で無駄のない着付けのなんと楽なことか。
私はそう自分に言い聞かせて、鏡台へ座った。
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