章ごとに主人公達が精神的葛藤を乗り越えて前に進んでいく様子が尊い。全員が鬼メンタルで「僕らが正義だ」じゃなくて、自分の中に色々な思いを自分なりの答えに変えていくのが好き。全体的にたくさん悩んで迷って、乗り越えるところが好き。メインストーリーの全員がモブじゃなくて人間っぽくて感情移入しやすくていい。
毎回ダンジョンボス達はイカれているけど、その章で積み上げたものを使いきってハッピーエンドを目指すのがすごい。無駄なものは何にも無かったんだって思える。
後、遥強すぎ…、これもう他の女性に勝ち目ないでしょ。それこそ主人公が記憶なくして、遥は干渉不可とかいうレベルのことが起きなきゃ無理ゲーって感じ。
ジャンル傾向的にトレンド化している「ゲームの世界に転生しちゃった」系の
ジャンルはおろか、ラノベという大きな括りで比較しても
非常に高いクオリティと言葉回しや造語のセンスが頭抜けていると
読んでいる内に納得させられる程の物語。
構成、登場人物、根幹となる設定、多くの造語など小説を構成する
要素が全てハイレベルであり作者様の並々ならぬ努力と試行錯誤が
文章に現れており、そうして紡がれた物語が読者の感情を揺さぶってくる。
端的に言うと物語カロリーが爆高の作品。書籍化も納得の質。
特段優れていると感じるのはゲームという数字とステータスという
便利な要素のある世界観から、それらを文章中で安易に使用せずに
一切排除し「リアルな世界」である
という前提に数々の独自理論にて表現し、なおかつそれが読者にも
分かりやすい語彙を使って表現している点。総じてバトルなども
単なるドンドンバリバリと効果音と数字と文字だけで殴り合っているような
単調なものには出来ず駆け引きや転々とする戦況などを表現せねばならないという縛りにありながら、読み応えのある名戦闘場面を
既にいくつも書き上げているという実績。
日常のシーンも含めて物語を彩る登場人物たちの生き様なども見ごたえあり。
ダンジョンの探索やゲーム世界の転生という要素そのものは
定着したアイデアでありながら、書かれている物語は唯一無二という希少性。
正しく秀作である。