抗え、ここはディストピア。

萩原稀有

抗え、ここはディストピア。

 甘い幻覚に侵されて たおれた独楽こまに軸はなく


 苦い六感をび込んで のた打ち回るは妄想かげなりて


 形而上下に区別なく 三位一体さんみいったい神代かみよ離れず


 いずれでは皆 ちりに等しきさだめだとしても




 抗え ここは未だ現実ディストピア


 善意の仮面かおが咲き乱れる街


 いずれへの誘惑を振り切って


 今宵もきずまみれた錆を






 語る幻想ゆめへと急かされて 駆ける舞子まいこはな


 朽ちた自転車を抱き締めて 寝そべる怪物とき視界を塞ぐ


 有形無形は有象無象 大般涅槃だいはつねはん俗世帰らず


 いずれでは皆 無を失わぬさだめだとしても




 抗え いまは斯の現実ディストピア


 好意の制約くさりが杭打たれる街


 胸中まんなかの虚無を押し遣って


 今宵も溢れた涙が明日あすを彫る






 いずれまで皆 何処いずこて置かれるさだめなのだから




 抗え ここは未だ現実ディストピア


 それでも空虚ねがいで充ち満ちく街


 錆びた仮面えがおは削ぎ落して


 今宵はただれた素貌かお自由そらへ笑う

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抗え、ここはディストピア。 萩原稀有 @4-42_48

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