ありがとう

解散をして豊さんは私に尋ねてきた。

「なあDr.と話したい。謝りたい事があるんだ。どうしても。」

「分かった。私は居ない方がいいか。」

「いや…どっちでも良い。」

地下室を目指して歩く。豊さんは近くなると息が荒くなる。

「Dr.入るよ。」

「ああ晃。……。」

黙り込んでいた。私は関係がないので後にした。

「なあDr.俺の息子覚えているか。5年前の。」

「あの時は見殺しにして本当に申し訳なかった。救えた命なのに指示があったから動けなかった。」

「確かに俺は怒っていたよ。AIも大嫌いだったさ。でもよ心理体と会ってからは人間らしくて生きてるんだなと実感できた。そんでもう怒ってはいないよ。最期の言葉聞いてくれてありがとうな。俺が来た時は最期の最後だったから。」

俺が伝えたいのは怒りでも悲しみでもない、ただ一つの感謝だ。

「そうか。…でも何もしていないからって懲戒解雇となって。人間なんて嫌なことの押し付け合いと思った。こんな世の中は嫌だった。そうして誰かを助けてあげたいと強く思ったから心理体になったんだろうな。…もう過去のことだから忘れた。」

「心の底からあいつを支えてくれてありがとう。…そして引きずっているならばもう良いよ。あいつもそう思ってるから。」

俺は心にずっと引きずっていた鎖が解けた。

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