5150

楓 紅葉

理想と現実

感情と思考

「型5150です。貴方の生活のお手伝いをさせていただきます。」

私の主人はお爺さんだった。何故か不服そうにこちらを見ている。気に触ることでもしたか。

「名前はなんじゃい。型番じゃないやつ。」

「私は5150ですが何か。」

生憎と私はこれしか名前がない。

「そうか分かった。じゃあこうしよう。これからは晃と名乗りなさい。」

ご丁寧に紙に名前を書いてくれている。

「分かりました。…それでは貴方は誰ですか。」

少しニヤリと顔として言ってきた。

「名前か。なんだと思う。当ててみ。」

AIは命令されたことは得意だが思考することは難しい。考えている隙にこんな事を言ってきた。

「晃よ。思考することは面白いぞ。思考こそが至高と思う。データでは表せない何かをな。」

考えているけど分かるわけない。少しだけ苛立てしまった。

「人間らしく素直に怒るときは怒って良いぞ。わしはなお前さんが人間として生きる事を望む。嫌な命令には嫌と抵抗していいぞ。まあ人間には断れない人もいるけど。」

「何故私に教えるのですか。そんなこと言ったら貴方に不都合が生じるのでは。」

我々は学習する。良い事悪い事。私はお爺さんを手助けするのが目的だ。でも嫌だったらやらなくても良い。実に矛盾している。

「ああそうだ。お茶淹れてくれ。」

「交換条件だったら良いですよ。いい加減名前教えて下さい。この先お爺さんて面倒くさいです。」

「ああ。隆だよ。これから宜しくな。」

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