第9話 真意

おもちゃにさせられた?

どういう意味だ?

疑問に感じていると斉藤は語り始めた。


「転生後、俺たちは状況を把握するので精一杯だった。なぜここにいるのか。なぜ俺たちなのか。そしてスキルは全員に与えられたものではなく、5人しか貰えなかったこと…分からないことだらけだった…そしたら綾が「龍一君がいるかも!」って言い出して、愛が飛んで出て行ってよ」


「そうなの。綾ちゃんの{感知者}で龍一君の居場所がわかって…あ、あれ?綾ちゃんは…どこ…?」


「…それが…分からない…」


「分からない?一緒に行動してたんじゃなかったのか?」


「いや違うんだ…君島以外のスキルを持つ4人は先に別室に案内されたんだ…そのあと……」


それは現代の平和に暮らしていた彼等が、

心身共に一生の傷を負うような過激なものだった。

指示は全て王の口から出たものらしい。

王の側近や近衛隊から捕縛され、

ある者は耐えきれずに舌を噛み絶命し、

ある者は反抗し殺処分されたと聞いた。


目の前で繰り広げられるもの、それは「人」として全てを壊される行為だったのだ。


「…!そんなことが…」



この時に呟いだ魔王の言葉は死ぬまで忘れないだろう。



『…人間は我達がいなくなれば…次は同族か…』



……言葉が出ない……


なぜだ?

何がこうさせた?

王は何を考えている?

人として恥を知れ!!


「……王…貴様……」


「いえ!!お、お待ち下さい勇者様!!本当に本当に私は…!!」


ふざけんな!ころ…


『待て龍一!!』


「なんだ?!」


『ここで殺してはお前を最後に殺した奴がわからん!!それと我からは奴が嘘をついてるようにはみえん!』


「魔眼か?…そもそも俺が殺された時に魔王、お前は誰が俺を殺したのか分からなかったのか?」


『あぁ、フードの下に仮面をつけていたからな』


「…そうか…俺が今こいつらを殺したら、お前には同族同士で殺し合いをして馬鹿げたものとして映るんだろうな」


『あぁ。よく分かってるじゃないか。魔族はそんなことはしない』


「わかったよ。そうなると王が操られている可能性がある…」


『我もそう感じた…』


!!!?


突如頭上からの光。

隣の魔王達が見えない程の強烈な光が辺りを包む。

時間にして僅か1秒。

しかし目が慣れるまでに何秒かかかった。

それ程までに強烈な光。


「…っ!!大丈夫か?!みんなっ!!」


「だ、大丈夫!」


「こっちも大丈夫だ!」


『…っ!オークキングもおるか?』


「だ、大丈夫です!」



目が慣れるとそこには城すら無く、王や軍は消えていた。

あと少しの所で消えてしまった。


「くそっ…なんだってんだ…」


この城に着いてから落ち着く暇もなく次から次に情報が入ってくる。


魔王との。

奴隷化したクラスメート。

元仲間、魔道士バルランの行方。

そして城と軍隊、王の消失。


魔王の言葉では王は嘘をついていないとの事だ。

それはつまり「王の意志ではなく、指示をしていた」ことになる。

王は操られていたのだろうか?そう考えるのが妥当だ。


「龍一君!大丈夫?」


君島が心配そうに尋ねてきた。


「あぁ、大丈夫だ。少し落ち着きたいが、今後の行動を決めたいと思う。それと…」


『我達も参加するとしよう。自己紹介もまだだな』


「…!え…?その…隣の生き物は…?!」


一同オークキングを見て驚いている。

興奮と解放されてからの安堵で気づかなかったのだろう。

君島が以前した反応と同じだな。

ちょうど落ち着きたいところだ。

一同そうだろう。


俺は落ち着くようにゆっくり経緯を話した。

転生し、元勇者で、一度死んだ?こと。

魔王とオークキングとの縁のこと。


「そ、そんなことあり得るのか…?」


「あり得るも何も転生したこと自体あり得ないからな」


『…』


「と、隣の魔王?様とやらは、一体どういう感情で龍一を見てるの…ですか?」


『我か?我は…』


ちらっとこちらを見ながら話しかけてきた斉藤に目を戻す。


『そ、そんな事よりもっと話すことがあるだろ!貴様らのスキル持ちの4人を探すのだろう?』


「…なんだ?話を逸らしやがって」


『黙れっ!お前も我を疑ってかかるときはすぐ気づくのでな!先程の闇、我の{ブラックホール}じゃないかと疑っただろう?』


「ちっ。バレたか」


『お前だけには我の心の内は明かしたくないもんだな!』


「はんっ!心優しい魔王様だもんな!」


『は、はぁぁぁああ!?なにをっ?!』


「いつも俺が魔王軍と戦い始めると、すぐ闇の中から現れ最前線で俺と戦ってただろ?そんな魔王聞いたことねぇよ」


「え?そんな魔王いるの?」


クラス一同ざわつき始める。


「人間共よ!我らが魔王様は魔族の王であり、全ての魔族を護ってこられた守護者なのだ!」


『よ、よい!黙れオークキング!!』


「傷を負えば一目散に助け、腹が減れば自ら狩った獅子や龍を与えてくださり、常に人間共の進軍から盾となってくださった!!それが我らが敬愛する魔王様だ!!」


「え、思ってた魔王とか違うんだけど…」


「ね。なんか、人間でもなかなかそこまで…」


「なにげにかっこよくない?…」


『ーーーー/////』


「かーわいっ、ま、お、う、さ、まっ!」


ボソッ『{ブラックホール}』


「ウソウソウソ!!ごめんっごめんっ!!!」


「龍一君そのうち殺されちゃうよ!」


『もう二度と我に可愛いとか言うなよ』


「す、すまん。…ところで魔王、その{ブラックホール}は誰でも使えるのか?」


『いや、我しか使えないはずだ。スキルは人によって収められる数は違うが、この世界に同じスキルを扱えるものはいない』



魔王の話を信じるとバルランの消失は{ブラックホール}じゃないということになる。

先程の光も、あれは何らかの魔法だったのだろうか。

…今は考えても答えが出なさそうだな。


さて、クラスメートをどうするか。

ここにいる奴等は皆スキルを持っていない。

このままでもしょうがないからな。

それこそ危険なので安全な城の中にいれば良かったんだが…


待てよ、この手があったな!

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嵌められた元勇者 〜チートスキル《破壊者》で魔王と共に下克上〜 @Bornite

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